テニスラケットの科学(121)  テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(18):ボールをツブして回転をかける

テニス雑誌の最近号の特集『ストローク大改造』に、フェデラーのコマ写真(添付図*)が掲載されていて、「厚く捕らえてボールをつぶし 上に振りぬいてスピンをかければ質のいい打球に!」と解説されていますが、(異見あり!)です。

図(2)で「厚く捕らえてボールをつぶし」、図(3)で「上に振りぬいてスピンをかける」かのような誤解を与えるのではないでしょうか!
図(2)において、ボールとストリングが接触している時間は3/1000秒程度で、この間にラケットが移動する距離は5 cm(センチメートル)程度ですから、ほぼ図(2)の状態でボールはストリングスを離れていきます。
したがって、ほぼ図(2)の瞬間に、ボールに対するラケットの軌道と面の角度と速度成分の結果として、ボールとラケットの法線方向の衝突力あるいはエネルギによって打球速度が(ボールがつぶれる量、ストリングがたわむ量も)決まり、接戦方向の衝突力あるいはエネルギによってスピンの回転量が決まるとみなせるでしょう!
したがって、図(3)を予測させる動きがすでに図(2)には含まれていることになり、図(3)のインパクト後の振り抜きは打球には影響しないことになります。
フェデラーのインパクト前の図(1)は、テークバックで、(肩関節を使って、)内側に回転【内旋】させていた上腕を(脇が開く)、(肩関節を使って、)外側に回転【外旋】させながら(グリップ端からラケットが出てくる)図(2)のインパクトに向かっていくように見えます。
インパクト直前では、腰を回転させないで、肘と手首の角度は変えないで肩関節を支点としてインパクトに向かってスイングされるので、結果として、身体の幾何学的な構造により、インパクト直前でグリップ端がラケットの遠心力に逆らって引き付けられることになり、その与えられたエネルギによってラケット・ヘッドが走ることが予測されます。
インパクトにおけるラケットの軌道と面の角度が適切であれば、速くて回転のかかった打球が生まれることになるのでしょう!

*画像:2019-0502-フェデラーのフォア-from TC2019年4月号p60-61-Sc-kawazoe
:テニスクラシック・ブレーク、2019年4月号、pp.60-61の一部を抜粋、編集

テニスラケットの科学(121)の補足(2020/3/27)➡