運動の発達と自由度

「ロボコン博士」の異名をとり、「不気味の谷現象」でも知られている 森 政弘 先生が、すでに30年以上前に、ロボットの視点から、次のように指摘されています。
「筋肉は動かすためだけに存在しているのではなく、自由度を固定し、一時的に自由度を減らすためにも動いている。任意の形をとり、ついでその任意の形を保持する。
この時、同時に重心の移動が生じる。」

ゲゼル (Gesell、 1945) は、子供の発達過程の膨大な観察から、運動の発達は全体に統合された状態から個々の部分のはたらきが特殊化するように進むこと、すなわち、運動の自由度は発達が進むにつれて増大していくこと、不安定化と安定化を繰り返しながらゆらぎをうまく使って進んでいくことを経験則として指摘しています。

また、ヒトの運動学習過程でも自由度に注目した研究がなされており、右利きの人に左で字を書かせると、はじめ関節の自由度を固定して体を硬くしてぎこちないが、慣れてくると余分な力を入れずに動作が可能になります。

スポーツで「力を抜け」という指示は自由度を解放することに相当しますが、初期の段階で動作の目的自体を達成するのには、自由度を凍結して体を硬くすることも不可欠といわれています。