テニスラケットの科学(529)
:ストリング(弦)の振動:バイオリンの奏法と音色
(高校生の自由研究:「バイオリンのハーモニクス奏法における倍音の持続現象に関する数理的研究」から)
(私論)バイオリンにおけるスナップバック現象

:バイオリンの弓を横に引くときに、弓を強く押し付けないで、弓を横に軽くひっかけると、スナップバック現象(横にずれて戻る)が起きて、弦が横に振動することが考えられますね!
弓はテニスでいえば、ボールに相当します!
良い音色(振動)を出すには、ほどよい押し付け力(圧力)が求められるのかもしれませんね!
(ご参考までに:川副)
● バイオリンのストリングと弓との摩擦力は、低速度領域では(静止状態から)速度が増すにつれて減少しますが、ある速度以上になると、速度が増すほど摩擦力は増すという特性(非線形)があります。
 バイオリンの音は、この摩擦力の非線形特性に基づく自励振動と呼ばれる(解析が難しい)非線形現象です。
 擦ることによってエネルギーが供給され、振動させていないのに、非線形摩擦特性によって、ひとりでに(自励的に)振動音が生まれます。 
” 
 ■「超絶技法」の秘密、現れた美しい数式
 【文部科学大臣賞】
バイオリンのハーモニクス奏法における倍音の持続現象に関する数理的研究
田中翔大さん=市立札幌開成中等教育学校5年
 弦にそっと触れて高音を奏でるバイオリンの「ハーモニクス奏法」。
 その弾き方にまつわる秘密を、数理モデルを使って解き明かした。
 バイオリンの音色と同じように美しい数式が現れたときには、「一睡もできないくらい興奮しました」と笑う。
 箸の扱いが器用だからと、バイオリンを4歳で始めた。
 今も毎夜、マンションの制限時間の午後9時まで練習。
 北海道のコンクールで優勝した経験もある。
 同時に魅せられたのが数学や物理だ。
 弦の振動や和音の研究は多く、「音楽の美しさは科学的に説明可能」のように語られることもある。
 「そんなはずない」と思ってユーチューブに公開された大学レベルの講義を聴きあさるうち、数式の美しさにも目覚め、弓や指による摩擦や振動が複雑なバイオリンは現代でも解明が未完だと知った。
 「あの現象は説明できるのかな」。
 思いついたのが奏者特有の、ある体験だ。
 弦を指で押す普通の弾き方と異なり、触れる指の位置や弓の圧力で音色が変わるハーモニクス奏法は、高難度の「超絶技法」だ。
 奏法の最中、誤って弦から指が離れると高い音(倍音)が数秒間だけ長引く、不思議な現象を体験する。
 でも、「弓の速さや強さによって、長引く時間が延びたり、短くなったりするのでは」という経験則による仮説は、科学的に解明されていないことを知った。
 そこで弦の振動を表す波動方程式に、弓による摩擦と、触れた指を組み込んだ独自の数理モデルを発案。
 練習の後は毎夜寝るまでプログラミングを駆使して、弓や指の動きで高音の時間が変わるか、シミュレーションに明け暮れた。
 その結果、「弓の動きが速い」「弓の圧力が小さい」といった条件で、高い音が長引くことが明らかになった。
 演奏の経験則と、計算結果の一致に驚いた。
 数式をまとめると、さらに発見があった。
 「ギーギー、サーサー」という特有のマズい音を出さないための二つの条件式は、先人の研究者が解明している。
 今回の独自式は、この二つの式を使って簡単に表現できることもわかった。
 複雑なバイオリンの奏法が、単純な数式に解きほぐされていく様子に、審査委員も「美しい」とうなった。
 上級者の間では、次の音に滑らかに移るために、ハーモニクス奏法中に指を離す技法も知られている。
 今回の独自式を生かせば、高い音を長く響かせるには、弓の圧力をなるべく弱くして、弦の振動を邪魔しないことがその秘訣(ひけつ)になる。
 「研究が進めば、新しい演奏の技が生まれるかもしれません」

謎にわくわく、近づきたい 第20回高校生・高専生科学技術チャレンジ
【文部科学大臣賞】
バイオリンのハーモニクス奏法における倍音の持続現象に関する数理的研究
田中翔大さん=市立札幌開成中等教育学校5年
「超絶技法」の秘密、現れた美しい数式
竹野内崇宏 2022年12月26日 朝日新聞