テニスラケットの科学(237):スピンとストリング(35) : ストリング表面とスピンの関係 :ラケットのストリングに シリコンスプレーをかけたプロ
・ 海外の新聞記事(例えばThe Sunday Times, 24 June 2012)などに、ラケットのストリングにシリコンスプレー(潤滑剤)をかけたプロが取り上げられ、話題になりました。
それに対してジョン・マッケンロー、イワン・レンドルなど過去のチャンピオンたちは、シリコンスプレーをストリングに塗ることを禁止すべきだと国際テニス連盟(ITF)に主張しました。
ITF科学技術研究所長のスチュアート・ミラー氏は、「現在はルール違反にはならない。スナップバック効果は認めているが、過去に禁止されたスパゲッティ・ラケット(二重のストリング構造/後述)を越えないように厳密に監視している」と答えています。
・市販潤滑剤を用いたラケットとボールの衝突実験
一般の潤滑剤として手に入りやすい『WD-40』を用いて実験した報告があります。
ラケットはグリップ位置を支点に、自由に回転できるように設置し、ボールをラケットのストリング面にマシンで衝突させたときのスピン量(ボールの回転速度)を測定した例です(Lindsey, Tennis Warehouse, 2011)。
ノッチのできた使用済みナチュラルストリング、ノッチのできた使用済みポリエステルストリング、1時間前に張った新品のポリエステルストリング、未使用の1ヵ月経ったナイロンストリング(シンセティック)の4種類のラケットについて実験した結果は、一般潤滑剤WD-40を塗った場合、14(19%?)~58%スピンが増大したという報告です。