テニスラケットの科学(629)
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり!
:科学的な裏付けがあるという『3ヶ月に1回は張り替えましょう』は、非科学的! (ストリング性能の寿命に関する誤解を解く!)①
:弾性率(荷重と変形量の比)の大小と弾力性(元に戻るバネの性質)は無関係!
● テニス雑誌の最近号*の記事の“ストリングを張り替えるタイミングを教えて!”という質問に対して、 『3ヶ月に1回は張り替えましょう』には科学的な裏付けがあるとして、“日本ラケット工業組合での客観的な実験検証で、ストリングを張ってしまうと、たとえ一度も使用しなくても、早いもので半月、最長でも3ケ月で硬化し、伸縮性(弾力性)が失われ、ボール飛ばなくなる(川副要約)と回答されていますが、異見ありです!
* テニス雑誌スマッシュ、2023年11月号、pp. 46-47.
● ストリング性能の寿命に関して多くの読者に誤解を与えるので、物理的(工学的)な視点で説明させていただきます。インパクト(超高速衝突現象)で何が起こっているかはとても複雑なので、参考記事も参照していただければ理解が深まると思います。
● 図1:データに書かれている「弾性率」と「弾力性(伸縮性)」とは無関係!
:このデータは、(ボールを打撃したときではなく、)ストリングの弦楽器的な性能測定結果なので、ボールを打撃しないとき、あるいはボールを打撃した後の振動や音など、弦楽器としてのストリングの特性としては意味があります。
すなわち、 ストリングを張った後、未使用の場合、1か月経過するまでは、振動や音の特性が不安定ということ、 1か月が経過すると、弦楽器としては、弾性率もテンションも一定し、安定した打感(ストリングの振動や音の高さ)になるということです。
・ 図2は、川副研究室による実験データーの物理的な見方を示しています。
「弾性率(あるいは弾性係数、あるいはヤング率)」は、ストリングに作用する荷重の大きさと変形量の大きさの比を意味しています。
「弾力性(あるいは伸縮性)」は、物体が変形した後に元の形状に戻る性質、すなわちバネとしての性質を意味します。
したがって、このグラフの科学的な見方は以下のようになります。
・ ストリングの弾性率は、張ってから3週間~1か月で安定する(荷重と変形量の比が一定になる)。
すなわち、張ったままのストリングの弾力性(バネ定数)が安定化するには、1か月程度かかる!ことを示しています。
・ 図3のデータに関する赤線部分の説明は誤解ですので、『3ヶ月に1回は張り替えましょう』の科学的な裏付けにはなっていません。
このデータは、むしろ、ストリングを張ってから1か月経過してから使うと、ストリングの弾性が安定するということを示していることになります。
・(参考までに)
ストリングが痛んでくるとスピン性能は低下しますが、 反発性能は変わらないので、 スピン打撃を得意とするプレーヤーはできるだけ新しいポリエステルのストリングが望ましいですが、 フラット打撃(フラットでも上級者は1000rpm程度のスピンはかかる)を中心とする一般プレーヤは、 弦楽器としての性能を楽しむ場合は別として、 張り替えに神経質になる必要はないと思います。
(注)
雑誌で取り上げられた、このデータは、ストリングの弦楽器的な性能測定結果ということができます。
弦楽器としてのストリング特性の測定としては意味があります。
ストリングを張った後、未使用の場合、1か月経過するまでは、振動や音の特性が不安定ということを示しています。
1か月が経過すると、弦楽器としては、弾性率もテンションも一定し、安定した打感(ストリングの振動や音の高さ)になることを示しています。
ボールをしばらく打撃すれば、もっと早く、弦楽器的な性能(インパクト後、ボールが離れた後の振動や音)も安定するはずです!
(参考記事)
● テニスラケットの科学(623)
:(サイト)「テニスを人一倍楽しむ方法」に掲載された記事の紹介
: 【ストリングの真実】 「ストリング・ガットの寿命について科学的に考える/
「3ヵ月以内」に張り替えなければならないってウソ?本当?
|川副研究室の研究結果を踏まえて」*
https://kawazoe-lab.com/tennis_racket/science-of-tennis-racket-623/?fbclid=IwAR2f7DwgUV9FVU9GxuuKcXHpcKTFio2TgGQPUbE_jiKSwZGEZDbqxWIXDlo
● テニスラケットの科学(356) :「日本ラケット工業協同組合」の”テニスストリングの張替タイミングはいつ?”に「異見あり!」(6) :張り替えタイミング・私見
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-356/
● テニスラケットの科学(355) :「日本ラケット工業協同組合」の”テニスストリングの張替タイミングはいつ?”に「異見あり!」(5)
実証実験➂ ナチュラル(天然ガット)でのトップ・スピン打撃実験
・ 使用後(Used)のナチュラルガット性能は、
新品(New)と比べて、スピン量の低減が著しく、打球速度(パワー)は低減しないで増大しています。
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-355/
● テニスラケットの科学(354) :「日本ラケット工業協同組合」の”テニスストリングの張替タイミングはいつ?”に「異見あり!」(4)
実証実験② ナイロン・ストリングでのトップ・スピン打撃実験
・使用後のストリング(青色)は、新品(白色)に比べて、スピン量(コントロール性能)の低下が顕著.
・使用後のストリング(青色)は、新品(白色)に比べて、打球速度(パワー)は増加している
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-354/
● テニスラケットの科学(606)
:インパクトにおけるストリング・テンション(張力)の事実
:張り上げテンション(設定・初張力)ではなく、(インパクトでの)リアル・テンション(張力)がボールを弾く
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-606/