テニスラケットの科学(644)
:テニスボールのリサイクル・再利用(4)
:硬式テニスボールのリサイクル提唱と高品質再生「ECOボール」の研究開発*(3) *
2011年のシンポジウム講演論文紹介
1.4 本研究の目的
使用済みボールの処理は重要な緊急課題である.
本報告では,使用済みテニスボールの再生技術に関連する研究および沖本ら(文献2)(文献3)が研究開発・商品化した“ECO Ball(エコボール)”(特許出願中)の概要について紹介し,今後の研究課題を展望する.
2. テニスボールのスピン性能におよぼすフェルトの影響
(文献4)
図2は,テニスボール(右)とフェルト(毛羽,メルトン)なしの滑面ボール(左)である.
図3,図4は,それぞれプロテニスプレーヤーの打撃におけるテニスボール(図3)と フェルトなしボール(図4)のインパクト後のスピン挙動である.
フェルトなしボールのインパクト後の挙動(図4)には、剛性低下によるボールの固有振動(ボールの飛びにおけるエネルギ損失に関連する)が見られるが,テニスボールには振動はほとんど見られない.
図5は,プロのトップスピン(順回転)打撃における テニスボールとフェルトなし(滑面)ボールのスピン性能測定値である.
フェルトなし(滑面)ボールは,スピン量(図a)が顕著に低減し(平均 50 %),
接触時間(図c)も短く(平均 23 %),スピン量が大きく減少するために インパクト直後の打球速度(図b)は速い(平均 42 %).
したがって,トップスピンで打撃しても, フェルトなし(滑面)ボールの場合は,ボールがコート内に収まらないでコート外に飛び出てしまう(次稿参照).
(次稿に続く)
(参考文献)
・ 川副 嘉彦, 沖本 賢次, 沖本 啓子, 南野 秦造, 島村 康太, 中川 真理,
硬式テニスボールのリサイクル提唱と高品質再生「ECOボール」の研究開発
シンポジウム: スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス講演論文集2011, 2011-10-30, pp. 441-446
https://kawazoe-lab.com/research/tennis-ball-recycling/
・研究紹介ーテニスラケットの性能予測
事例3:テニスボールの毛羽の役割
https://kawazoe-lab.com/…/perf…/performance-prediction4/
文献
(2) “使い古しのテニスボールを新品同様に再生 サンアイ”,地球環境新聞,2010年7月8日木曜日.
(3) 南野泰造,“千葉県テニス協会の取組み”,JTA環境リポート2011, p.11 (2011).
(4) 川副嘉彦,武田幸宏,中川慎理,青木克巳,
“テニスのトップスピンとアンダースピンのボール挙動におよぼすボール毛羽の影響(超高速ビデオ画像解析と流れの可視化)”,
ジョイントシンポジウム2009(スポーツ工学& ヒューマン・ダイナミクス)講演論文集, No. 09-45, 日本機械学会,pp. 118-123 (2009).