テニスラケットの科学(703)
:New Spin Strings 「SpinGen」(新しいスピンガット SpinGen )のスピン理論に異見あり!
:ストリング面とボールとの接触・摩擦(インパクト)において,ストリング素線の表面粗さは意味がない!

 「SpinGen」という新しいスピンガットを紹介する興味深い映像を拝見しました.
 Snap-back現象の説明に川副研究室(Kawazoe-Lab)の映像が使われているようですし,新しいスピンガット SpinGen のスピン理論に(少し?)異見がありますので,紹介させていただきます.

映像1:SpinGen
Part1
:New Spin Strings
can generate spin you need.
But you lose edges after 2-3 hours of play.
SpinGen makes the string top surfaces rough.
Part2: How spin generated.
: Main strings slide and snap-back movement generate spin.
Spin genaration process consists of 3 steps.

(日本語直訳)
Part1
: 新しいスピンストリングは、必要なスピンを生み出すことができます。 しかし、2~3時間のプレー後にはエッジが失われます。 SpinGenはストリングの表面を粗くします。
「edges(エッジ)」という言葉は、文脈から,多角形や凹凸のあるストリングを指しているのでしょうね.
(注釈:川副研究室)
: 後述しますが(画像1),この映像にもありますが,形状が多角形や凹凸のあるストリングについては,世の中には,まだ誤解が多いようです.
多角形や凹凸のあるストリングが,スピンを生み出すためにボールに対して強いグリップを提供しますというのはメーカーの誤解かと思います.
また,ストリングが粗いと、ボールをしっかりと捉え、より多くのスピンをかけやすくなりますというのもメーカーの誤解かと思います。
 ボールとストリング面の摩擦において,ストリング素線の摩擦が大きい方が,スピン量が大きいという実験データーは見たことがありません.
 また,プレーを重ねると、エッジ(多角形や凹凸)が摩耗し、滑らかになり,その結果、ボールとの摩擦が減り、スピンがかかりにくくなるというのは,メーカーの誤解で,スピン理論と矛盾していますね!
したがって,「エッジが失われる」と、ストリングの摩耗によって,ボールとストリング面の摩擦の低減によってスピンをかける能力が低下する とは言えないと思います.(以上,注:川副研究室)
Part2
: スピンの生成方法: メインストリングがスライドして元の位置に戻る動きがスピンを生み出します。 スピン生成プロセスは3つのステップで構成されています。

映像2:スナップバック現象の紹介(川副研究室の実験)

映像3:スナップバックの原理解説(川副研究室withNHK)

映像4:新しいスピンガット SpinGen のスピン理論

 SpinGen:
 Combine the rough and smooth strings together.
Together they become ideal spin strings.
(日本語訳)
ボールを”ロック”する(ボールをしっかりと捕える)ために、上面は粗く、自由に動くために、下面は滑らかに仕上げられている。
Luxilon Alupower16L with SpinGen.

画像1:新しいスピンガット SpinGen のスピン理論に異見あり!
:インパクトにおいて,ボールとの接触を考える時に,ストリング面は、縦糸と横糸が編まれていること自体が大きな粗さになるわけですから、わざわざストリング単体の表面を粗くする必要はないですね!
 ストリング素線の表面を粗くしても意味がないことになりますね.

画像ー1

(参考記事)
・テニスラケットの科学(535)
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(45)
:ストリングの太さ(ゲージ)1.1mm、1.2mm、1.3mm の3種類とラケット性能②(ラケットの反発力、打球速度)
:理論的な裏付け
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-535/

・テニスラケットの科学(470)
:テニスラケットの科学(469)の補足1
:多角形断面ストリング(多角形ポリ、俗称スピン・ガット)のスピン性能に関連して
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-470/