テニスラケットの科学(828)
:テニスラケットの科学(826)の補足2
:研究者も誤解の多い「ストリング・テンションと打球速度」の関係
:学術論文「ラケットとテニスボールの衝突解析」(2008年)*の紹介と川副研究室の「異見!」
:リアル・テンション、接触時間、ラケットの反発力に影響するのは衝突速度
:(例えば)ボールとストリング面の衝突速度が 9.5 m/s(時速30キロ)では、接触時間は1000分の7秒、張り上げテンションの影響あり! 一方、衝突速度が30 m/s(時速110キロ)では、接触時間は1000分の3秒、張り上げテンションの影響はほとんどない!
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* 中川紀壽,弓取正治(2008)、ラケットとテニスボールの衝突解析.Journal of the Society of Materials Science, Japan,57(4):368-373
最近(2023年発表)の「ソフトテニスラケットにおけるストリングテンションと打球速度」に関する学術論文**の緒言(研究の背景)には、「ラケットとテニスボールの衝突解析」(2008年)という論文*も引用されていますので、ボールとストリング面の反発係数と接触時間(接触してから離れるまでの時間)におよぼす張り上げテンション(初張力)の影響に関する実験結果のみを紹介し、多少、コメントさせていただきます。
実験結果は、どのような実験でも、必要十分な実験条件が明示されていれば貴重です。実験データの見方・考え方が重要です。
** ソフトテニスラケットにおけるストリングテンションの違いが打球速度および打球コントロールに及ぼす影響、松江 拓, 前田 明,スポーツパフォーマンス研究, 2023年、15巻 pp. 186-192.
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画像1:
学術論文「ラケットとテニスボールの衝突解析」(2008年)*の紹介と川副研究室の「異見!」
:リアル・テンション、接触時間、ラケットの反発力に影響するのは衝突速度
:(例えば)ボールとストリング面の衝突速度が 9.5 m/s(時速30キロ)では、接触時間は1000分の7秒、張り上げテンションの影響あり!
一方、衝突速度が30 m/s(時速110キロ)では、接触時間は1000分の3秒、張り上げテンションの影響はほとんどない!

画像ー1
画像2:
ラケットヘッドを固定したストリング面にボールを衝突させた場合の、入射速度に対する反射速度の測定結果ですから、「ボールとストリング面の反発係数」、あるいは「ストリング面の反発力」を表していることになります。
ラケットの反発力を表すわけではありません。(ヘッドを固定すると、ラケット重量は無限大になっています)

画像ー2
画像3:
ラケットヘッドを固定したストリング面にボールを衝突させた場合の、ボールとストリング面の接触時間の測定値です。
ボールとラケットの接触時間を表すわけではありません。

画像ー3
画像4:
衝突速度が非常に低い場合は、画像5に示すように、張り上げテンションが影響するので、テンションが高いほど接触時間は短くなりますが、実用的な衝突速度の範囲では、接触時間に及ぼす張り上げテンションの影響はなくなります。

画像ー4
画像5:
実際のプレー状態のインパクトのように、ボールとストリング面の変形が大きくなると、バネ剛性が大きくなり、張り上げテンションよりも変形によるテンション増大の影響の方が大きくなります。
したがって、張り上げテンションの影響がなくなるのです。

画像ー5
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(参考記事)
・テニスラケットの科学(826)
:研究者も誤解の多い「ストリング・テンションと打球速度」の関係
:最近(2023年)の「ソフトテニスラケットにおけるストリングテンションと打球速度」に関する学術論文*に「異見あり!」
:試行者(プレーヤー)特性のバラツキの大きさと打球速度(実測値)のバラツキ(川副研究室の見方・考え方)
・テニスラケットの科学(541)
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(51)
:ストリング・テンションとラケット性能➃
:ボールとラケットの接触時間
