テニスラケットの科学(861)
:(備忘録;解説記事 1997年)
スポーツ工学/テニスラケットの選び方*
*川副嘉彦,日本機械学会誌,第100巻,944号,付録,関東支部ニュースレター(1997.7),p.3.

*川副嘉彦,日本機械学会誌,第100巻,944号,付録,関東支部ニュースレター(1997.7),p.3.
https://kawazoe-lab.com/research/tenisurakkettonoerabikata/


 約30年前に日本機械学会誌に書かせていただいた記事ですが,今,読み返すと,初心がなつかしく思い出されます!
 自動車用エンジンの振動・騒音の研究を控え目にして,草テニスの実践とラケットの研究にのめりこんでいた時期です!

 画像1:

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 以下は記事*の引用です.
*川副嘉彦,日本機械学会誌,第100巻,944号,付録,関東支部ニュースレター(1997.7),p.3.
https://kawazoe-lab.com/wp…/uploads/2016/10/19970704.pdf

スポーツ工学/テニスラケットの選び方  
        川副嘉彦 1997年7月
 スポーツは、やる人にとってはもちろん、観るだけでも楽しいものです.
 写真(画像2)は佐伯美穂選手の華麗なフォームです.
 機械の動きとはだいぶ違います.
 画像2

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:佐伯選手の華麗なフォームです.(1997年)
 機械の動きとはだいぶ違います.
 スポーツは体験により修得するものですから,きわめて主観的なものです.
 したがって,スポーツ用具が実際のプレーにどのように影響するかを客観的に評価することは難しいことです.
 まだまだ謎の世界です.
 テニスをやる人なら,テニスコーチのアドバイスやテニスの技術解説書の中に「ボールを長くラケットに乗せるように打つと良い」あるいは,「コントロールをよくするには,できるだけ長い時間ボールをラケットの上に載せておきなさい」という説明を聞いたり読んだりしたことがあると思います.
 この説明は正しいのでしょうか.
 たしかにプレイの上達には効果があるかもしれませんが,逆に上達の妨げになることもあるかもしれません.
 なぜかというと,この説明は,物理的には間違っているからです.
 画像3:

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 ラケットのストリング面がボールに接触し始めた瞬間から,ボールがストリング面を離れて飛び出すまでの時間をインパクト・タイム(接触時間)と呼んでいます.
 インパクト・タイムは,一般プレーヤーでは千分の4秒程度,上級のレベルでは千分の3秒程度です.
 ボールとラケットが接触している時間は衝突速度で決まるもので,われわれがインパクトの瞬間にラケットに操作を加えたりすることはできません.
 接触している時間を長くしようと思ったら,スイング速度を落とすしかありません.
 しかし,スイング速度が遅すぎると,もちろん打球は遅くなりますが,それだけではなくて相手のボールが速い場合はコントロールも難しくなります.
 ボールをストリング面に乗せた状態で打ちたい方向に移動させる距離が短くなるからです.
 したがって,「できるだけ長い時間ボールをラケットの上に載せておきなさい」という説明の物理的な意味は,「インパクトの瞬間に向かってラケット面が安定な軌道を描くようになめらかなスイングをしなさい」ということになります.
 もう一つ例を挙げます.
 厚ラケと呼ばれている剛性の高い(がっしりしていてフレームが変形しにくい)ラケットがあります.
 よく飛ぶという宣伝文句で衝撃的なデビューをしたために,厚ラケは無条件に良く飛ぶという先入観を持っている人が結構います.
 しかし,ボールをラケット面の中心付近で打つときは,厚ラケのメリットはほとんどありません.
 中心を大きくはずれたときに違いがあらわれるのです.
 厚ラケも薄ラケもラケット面の中心近くで打つ限りは差がありません.
 反発力は,フレームの重量バランスで容易に高めることができます.
 これが,世界のトップ・プロが厚ラケをあまり使わない理由の一つです.
 素材や設計・製造技術の進歩により特長の異なるタイプの種々のラケットが市販されるようになりました.
 しかし,ラケット選びはますます難しくなり,プレーヤーにとって永遠の課題の一つです.
 スポーツ工学(文献1)の成果の公表は,スポーツ雑誌(文献2)だけではなく,インターネット上(文献3)でも試みられています.
(参考文献)
1.三浦・宇治橋,スポーツ工学事始め,日本機械学会誌,第95巻888号(1992), pp.967-970.
2.川副,ラケットの科学Ⅱ,月刊テニスジャーナル,13-4(1994), pp.101-106.
3.川副研究室ホームページ(1997年)*
*(追記:2026年7月20日)現在:川副研究室-KAWAZOE-LAB | テニスを科学するー川副嘉彦 
https://kawazoe-lab.com/tennis_racket/