テニスラケットの科学(869):
(備忘録:解説記事 2000年)
スポーツ用具 in モード解析ハンドブック*(その4)
:ボールとラケットの衝突における応答予測
*川副嘉彦(分担執筆),18.2 スポーツ用具 in モード解析ハンドブック,モード解析ハンドブック編集委員会編,コロナ社(2000年), pp.454-461.


(続き)
18.2.3 ボールとラケットの衝突における応答予測
[1] 非線形衝突解析による衝突力時系列波形の近似
 ボールとラケットの反発係数は衝突におけるエネルギ損失と密接に関係しており,ボールとストリングスの瞬間的な大変形によるエネルギ損失とフレームの振動によるエネルギ損失が主なものである.
 ボールとストリングスのエネルギ損失は,ストリングス周辺のラケット・ヘッドを固定してボールを衝突させたときの反発係数実測値eBG から求めることにし,ラケット・フレームの振動によるエネルギ損失は,実験的に同定したラケットの振動特性と衝突力の予測波形から導く.
ボールおよびボール・ストリングス複合系の荷重と変形量の実測値に基づいて,中心に質量を集中させたボールがストリングスに接触する片側だけ変形すると仮定し,ボール・ストリングス複合系の復原力特性を最小自乗近似により求めてボール・ストリングス複合系を非線形1自由系として近似する.
画像1: 衝突力時系列波形の近似式

画像ー1


[2]ラケットの動的応答の予測
 次に,ラケットの振動成分について扱う.
 線形系として実験的に同定したラケットの振動モデルに近似衝突解析から求めた衝突力を適用すれば,ボールとの衝突におけるラケットの振動が予測できる.

画像ー2


 インパクトにおけるボールとラケットの接触時間 Tc が短いほど,高い振動数の複雑なラケット振動モード(形)まで,フレームの曲げやねじりやフープ振動など,多くの振動モード(形)が発現することを示しています.

画像ー3


画像ー4


 手持ちラケットと宙づりラケットの場合の、インパクトにおけるフレームの初期変位振幅の予測値です。 
 初期振幅には大きな違いはありません。
 しかし、手持ちの場合は振動はすぐに低減し,宙づりラケットの場合は振動は長く持続します.
 手による減衰効果は,ラケットフレームの減衰に比べて,はるかに大きいです.
・(文献)
・スポーツ・ヒューマンダイナミクス:スポーツ用具
川副嘉彦(分担執筆),
モード解析ハンドブック,モード解析ハンドブック編集委員会編,コロナ社(2000年1月),  pp.454-461.
https://kawazoe-lab.com/research/sports-equipment-3/