テニスラケットの科学(471)  :ストリングのゲージ太さ(直径)とボールの飛び(打球速度)の関係:トラックマンによる測定例: フォアハンド、バックハンド、フラットサーブ、スライス・サーブ、スピンサーブにおける1.1 mm、1.2 mm、1.3 mmの比較

●  図1(グラフ)の
・ 横軸は、フォアハンド・フラット打撃、フォアハンド・トップスピン打撃、バックハンド・フラット打撃、バックハンド・スライス打撃、フラット・サーブ、スライス・サーブ、スピンサーブにおけるストリングのゲージ太さ3種(1.1 mm、1.2 mm、1.3 mm)、
縦軸はスピード(打球速度)を示しています。
トラックマンによる測定値(平均値)を比較したものです。
・予想されるように、どのショットにおいても、ストリングのゲージ太さ3種(1.1 mm、1.2 mm、1.3 mm)がスピード(打球速度):平均値におよぼす影響はほとんど見られません。
・ショットによって、ゲージ太さ3種(1.1 mm、1.2 mm、1.3 mm)に多少の違いがありますが、これは、図2のように、同じ太さのストリングで打っても、スイング軌道やインパクトでのラケット面の傾きなどの微妙な違いがあって、厳密にいえば避けられない(人間・生き物?特有の!)、各ショットごとのバラつきがあるからです。
・平均値の違いよりも同じ条件での試打ごとのバラつきの方が大きく、ストリング面へのちょっとした衝突の仕方で結果が微妙に異なります。(フェデラー選手のような世界のトッププロであろうと、1mmの正確さで打つことはできません。)
・また、理論やシミュレーションにおいても、参考文献にあるように、硬いストリング面はたわみが少なく、軟らかいストリング面はたわみが大きく、ほとんど衝突力・復原力に違いがないので、結局、打球速度にもほとんど違いがないのです。

図ー1


● 図2は、測定結果表示画面(フラットサーブにおける1.2 mm の試打例)です。
3種の平均値の違いよりも、同じ条件での各ゲージ太さの実験での試打毎のバラつきの方が大きいことを示しています。
ストリング面へのちょっとした衝突の仕方で結果が微妙に異なります。
フェデラーのような世界のトッププロであろうと、1mmの正確さで打つことはできません。
したがって、この実験も、「ゲージ太さはどのショットでも打球速度にはほとんど影響しない」というエヴィデンスを示していることになります。
・(追記)
 図2は、フラット・サーブの試打例で、ボール着地点のバラつきが大きく、スピンの割合が少ないので、特にコントロールが難しいことを示しています。

図ー2


● フレームに弦を張った弦楽器としてのラケット性能(音、手に伝わる振動の感触など)には顕著な違いがあります。
インパクトにおける接触時間(1000分の3~4秒)における瞬間的な出来事を人間は感知できないので、ボールがストリング面を離れた後に残されたボールとラケットの音や振動などの打感を楽しむしかありません!
(参考文献)
・試打ラケTV ガットの太さによる性能を徹底比較!!ゲージによって全く違う!?トラックマン レーダー測定 ~STRING GAGE TRACKMAN TENISSRACKET REVIEW~ 

結論/CONCLUSION 

・川副嘉彦、
ボールとの衝突を想定したテニスラケットの性能予測(衝突諸量におよぼすストリング・ゲージの影響)、
日本機械学会第72期全国大会講演論文集(Vol.IV),No. 940-30 (1994年), pp. 72-74.471-1