テニスラケットの科学(472)  :ストリングのゲージ太さ(直径)とスピン量の関係:トラックマンによる測定例: フォアハンド、バックハンド、フラットサーブ、スライス・サーブ、スピンサーブにおける1.1 ㎜、1.2 ㎜、1.3 mmの比較

●  図1(グラフ)の横軸は、フォアハンド・フラット打撃、フォアハンド・トップスピン打撃、バックハンド・フラット打撃、バックハンド・スライス打撃、フラット・サーブ、スライス・サーブ、スピンサーブにおけるストリングのゲージ太さ3種(1.1 mm、1.2 mm、1.3 mm)、
縦軸はスピン量(回転速度)を示しています。
トラックマンによる測定値(平均値)を比較したものです。

 ショット毎に多少のスピン量の違いがありますが、最もスピン量が大きく(回転数が高く)、スピン性能を特徴的に示すスピン・サーブのデータにおいて、ゲージ太さ3種(1.1 mm、1.2 mm、1.3 mm)の違いはほとんどありません。

実験結果としては、どのショットにおいても、ストリングのゲージ太さ3種(1.1 mm、1.2 mm、1.3 mm)がスピン量(回転速度rpm):平均値におよぼす影響はほとんどないと結論することができます。

物理的な背景としては、ボールとラケットの衝突力(すなわち反発力)は衝突速度に依存し、斜め衝突においてスピンを生むボールに作用する接線方向についても、ゲージ直径の太いストリングの変形(接線方向のたわみ)は小さめで、細いストリングの変形(接線方向のたわみ)は大きめなので、結局、スピンを生む接線力にはほとんど違いがないことになります。したがって、スピン量(回転数rpm)にも違いがないことになります。

図ー1


● 図2は、測定結果表示画面(スピン・サーブにおける1.3 mm の試打例)です。
同じショット条件において、各ゲージ太さの実験での試打毎のバラつきがあるので、スピン量が微妙に異なります。
 特にスピンは、ストリング面へのちょっとした衝突の仕方で結果が微妙に異なるはずですが、データのバラつきは少ない方です。
 フェデラー選手のような世界のトッププロであろうと、毎回10センチ(?)の正確さで打つことはできません。
 したがって、この実験も、「ゲージ太さは、どのショットにおいても、スピン量(回転数)にほとんど影響しない」というエヴィデンスを示していることになります。

図ー2


● フレームに弦を張った弦楽器としてのラケット性能(音、手に伝わる振動の感触など)には顕著な違いがあります。
 インパクトにおける接触時間(1000分の3~4秒)における瞬間的な出来事を人間は感知できないので、ボールがストリング面を離れた後に残されたボールとラケットの音や振動などの打感を楽しむことになります!。
(参考文献)
・試打ラケ ガットの太さによる性能を徹底比較!!ゲージによって全く違う!?トラックマン レーダー測定 ~STRING GAGE TRACKMAN TENISSRACKET REVIEW~

結論/CONCLUSION

・川副嘉彦、
ボールとの衝突を想定したテニスラケットの性能予測(衝突諸量におよぼすストリング・ゲージの影響)、
日本機械学会第72期全国大会講演論文集(Vol.IV),No. 940-30 (1994年), pp. 72-74.