テニスラケットの科学(173)  テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(30):マルチナ・ヒンギス選手の現代フォアハンド・ストロークのメカニクス(Modern Forehand Mechanics of Martina Hingis)

Vic Braden, Howard Brody, Andrew Cow, Bruce Elliott, Tom Gullikson, Duane Knudson、Jack Kramer, Patrick McEnroe, Pam Schriver, Stan Smith, Dennis Van der Meerなど(私が個人的に知っている人物を含めて)テニスに関するバイオメカニクス、テニス技術、コーチングなどの分野の世界的に著名な専門家30名による世界的に著名なテニス書「World-Class TENNIS TECHNIQUE」(*)の Chapter 9 Forehand (pp-147-172)は、一貫してヒンギス選手(*添付図)を主要な例に挙げてフォアハンドの解説があります。(異見あり!)です。(いろいろ?)

添付図(*)のそれぞれ(写真番号1~6:番号は川副が付けたもの)に基づいて、文献も引用して、“Preparation:構え”、“Backswing:バックスイング”、“Forward swing:フォワードスイング”、“Impact:インパクト”、“Followthrough:フォロースルー”について丁寧に解説されているのですが、たとえば、写真3,写真4から写真5に移行する身体の使い方については具体的な説明がありません。また、最重要な「インパクト」の写真が抜けています。

さらに、“フォワードスイング”について、「フォアハンドにおけるラケットヘッド速度は主に“horizontal flexion/abduction and internal rotation of the upper arm and the linear movement of the shoulder”に依存する」と解説されています。たしかに、写真5,写真6を見ると、直線的な肩の動きと上腕の内側への回転が見られますが、写真5のフォワードスイング開始時には、すでに内側ではなく、上腕の外側への回転(外旋)が見られますし、写真6の上腕の内側への回転はインパクト後のフォロースルーのときです。写真4から写真5への移行についてもブラックボックスで、どのように身体とラケットを操作しているのかという説明がないので、読者は(私も)身体の動きとしてマネすることができません。

他にも、「バックスイングの過程でなされる運動は地面に対して力を生み出す。そうすると地面は等しい大きさの反力で押し返す。バイオメカニカルな視点から、選手は“作用反作用”の原理を応用している(川副訳:ご参考までに)」という説明もありますが、いろいろ(異見あり!)です。まず、バックスイング(写真4から写真5への移行)がブラックボックスになっています。これに関しては、すでに異見を少し紹介させていただきましたが、機会があればもう少し考察してみたいと思います!

(追)
この書籍は約15年前にロンドンでITFの科学技術に関する会議(Automatic line judging systems: ライン・ジャッジ・システムも主要な話題のひとつでした)があったときにたまたま街の書店で購入したように記憶するのですが(?)、フォアハンドの解説がどう書いてあるのか気になって改めてざっと目を通してみました。
すると、最近の日本のテニス書やテニス雑誌の記事も、この書籍の内容の影響を受けているのかな(受け売り?)という印象を受けました。

*文献
・Chapter 9 Forehand, World-Class TENNIS TECHNIQUE, Paul Roetert and Jack Groppel, editors. pp-147-172), 2001 by Human Kinetics Publishers, Inc.
・画像:World-Class TENNIS TECHNIQUE, Paul Roetert and Jack Groppel, editors. , 2001 by Human Kinetics Publishers, Inc. pp.158-159の写真を抜粋,編集したものです。(川副)