テニスラケットの科学(200):スピンの実際(まとめ) :打球速度、方向、スピン量(回転角速度)の生成原理
● 打球後のボールの挙動はどのように決まるのか?
スイングの速度、スイングの方向、ラケット面の傾きが関係する
ボールをラケットで打ったときの打球速度、スピン量(回転角速度)、接触時間などのすべてが、インパクトの瞬間に決まります。
イラスト1は、フォアハンド・トップスピンのインパクト後の打球速度、方向、スピン量(回転角速度)がどのように発現するかを示したものです。
インパクト直前と直後のボールの挙動の変化には、ボール・ラケット間の反発特性や摩擦特性など、複雑な要素が関係するので想像するのが難しいのですが、これは実際にボールを打ったときの高速度カメラで撮影した映像の連続写真をイラスト化したものです。
ボールはA➡B➡Cと飛んできて、Eでラケットにぶつかり、ラケットもA➡B➡Cとスイングされて、Eでボールにぶつかっています。ただし、緑の➡(スイングによるラケット・ヘッド速度)はD-E間を動く速さ、インパクトの瞬間の方向です。Eがインパクト・ポイントで、この場合は、ラケット面はほぼ垂直になっています。
インパクト後のボールの速度と方向と回転量(トップスピン、アンダースピン)は、力学的には、飛来するインパクト直前のボールの速度と方向と回転量(回転角速度)に対して、「インパクトにおける ①スイングの速度 ②スイングの方向 ③ ラケット面の傾き」という三つの要素によって決まります。
弾んだボールをライジングで(上がりっぱなを)打つのか、頂上で打つのか、下がってボールが落ちてくるところを打つのかによっても異なります。
イラスト2は、ほかの条件はイラスト1と同じにして、インパクトにおけるラケット面の傾きだけを変えた場合に打球がどうなるかについて示したものです。
aはラケット面が前に少し傾いている場合、bはラケット面が後ろに少し傾いている場合です。
トップスピンの量はaの方が多く、打球速度はbの方が大きいことを示しています。
(参考文献)
川副嘉彦、スピン大研究:スピンの実際、テニスマガジン、2019年9月号、pp.14-18.