テニスラケットの科学(201):スピンの実際(まとめ):フェデラーのフォアハンド・トップスピンの例

誰もが憧れるフェデラーのフォアハンドの特長
① インパクト直前の1000分の2秒前のボールとラケット・ヘッドとの<高低差>がトップスピンを生む!
インパクトの1000分の2秒前(frame 17)でも、ボールとラケット・ヘッドとの<高低差>があり、インパクトの時点(frame 18)で同じ高さになっていることがわかります。
この非常に短い時間の間の<高低差>が、ボールに強い縦回転(トップスピン)をもたらすことが予測されます。これがフェデラーの省エネ・超トップスピンの原理の一つと推測されます。
② フェデラーの打法は省エネ・超効率的テークバックである
これまで見てきたように、フェデラーはラケット面をかぶせながら腕とラケットを落としたあとで、肩・上腕を外旋しながらフォワードスイングへ移行すると、肩・上腕の回転やスイングがしやすく、可動域も大きくなり、ラケットを二度引きしないでもラケット・ヘッドが自然に後ろに深くなります。
その深くて低い位置から肩を支点にフォワードスイングされるのですから、フォアの構え(テークバック)がコンパクトであるにもかかわらず、ヘッドがインパクト位置まで加速するには十分な距離があるため、打球速度が大きくなるだけでなく、インパクト直前のボールとの高低差と相まってスピンの回転角速度も大きくなるはずです。
これがフェデラーの省エネ・超トップスピン原理の二つ目と推測されます。
そうするとこのフェデラーの効率的テークバックからのフォアハンド打法は、高齢者や小学生以下の子供たちにこそ適している打法ではないかと考えます。特に障害予防の観点からも理想の打法のはずです。
(参考文献)
川副嘉彦、スピン大研究:スピンの実際、テニスマガジン、2019年9月号、pp.14-18.

フェデラーのフォアハンド・トップスピンの例
フェデラーのフォアハンド・トップスピンの例