テニスラケットの科学(223):スピンとストリング(21) : プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション :ストリング・テンションと反発力係数(ラケットの反発性能)

 図は、ラケットのグリップ端から75mmを固定してボールを衝突させたときのボール・ラケットの反発力係数(ラケットの反発性能) e = Vout / Vin (=ボールの跳ね返り速度/入射速度)とストリング・テンションの関係を調べた実験結果(外山・桜井2004)をグラフ化したものです。
 グリップを固定した場合は、テニスにおける実際のインパクトと振動モード(変形の形)が異なりますが、ボールとストリング面の衝突による伝播波がグリップ端で反射して、ストリング面上の打点まで戻ってくる前にボールが飛び出してしまうので(神田・川副1995)、手による把持やグリップ自由(宙づり)のラケットの場合と反発力係数の値に大きな違いはありません。
 反発力係数におよぼすテンションの影響は、ほとんどありません。
 平均値の差は、ばらつきの範囲に収まっています。
(ご参考までに)
 反発力係数は、ボール・ストリングの反発係数とストリング面上の打点に換算したラケット換算重量(ラケット面の打撃点の位置、ストリング面ラケット重量、重心:バランス値、スイング・ウェイトから算出できます)とで決まります。
(注)反発力係数は、仮想反発係数と呼ばれることが多いのですが、意味が分かりにくく、反発係数と紛らわしかったので、和文論文では1998年に、国際会議では2002年にkawazoeが定義したものですが、その後、米国ラケットストリンガー協会(USRSA)の機関誌論文でも Rod Cross らにより提案されています。