テニスラケットの科学(225):スピンとストリング(23) : プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション :テンションを変えてもボールとストリングの反発係数が変わらないのはなぜか? (その3:まとめ)

 図に示すように,ストリングを張るときのテンションの高低は,同一のストリングスをあらかじめ強めに張るか弱めに張るかという初張力(張り上がりテンション)の違いであり,衝突速度 20 m/s 以上の現実的なインパクトでは,変形が大きいほどストリング面が硬くなることの影響の方が初張力によるストリング面の硬さの影響よりも大きくなり、(張り上がり)テンションに高低があってもスリング面の硬さには違いがなくなります。(テニスラケットの科学(207参照))
 したがって、ボールの変形量にも違いがなくなります。
 ストリングの反発係数は、素材やテンションの違いがあっても、0.97(ほとんどエネルギー損失がない)という実験報告もあり、ボールとストリング面の反発係数はボールのエネルギー損失の違いによって決まることになるので、(張り上がり)テンションを変えてもボールとストリング面の反発係数は変わらないことになります。
 また、接触時間はストリング面の硬さとボールの硬さに逆比例するので、接触時間も、現実的な衝突速度の範囲では、テンションを変えても変わらないことになります。
(参考文献)
川副嘉彦・沖本賢次・沖本啓子、
テニスラケットのスピン性能のメカニズム(ストリング交差点潤滑によるスピン性能向上の超高速ビデオ画像解析)、
日本機械学会論文集、 C編 72巻(718号)、 2006、 pp.1900-1907.