テニスラケットの科学(227)
:スピンとストリング(25)
:プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション
:講演論文(1999年)紹介
:テニスラケットのフレーム振動におよばすストリングスの張り方・張力分布の影響(1本張りと2本張りの張力分布の違いの影響)―その2

 テレビのテニス実況において、アナウンサーや解説者が、プロの選手が試合の途中で、ストリング・テンションをわずか2,3ポンド変えただけで、「緩く張るとボールがよく飛びます、硬く張ると飛ばなくなります!」と最近では既成事実のように断定的に解説されることがあります。
 しかし、経験豊かなベテランのプロ・ストリンガーが 55lb/52lb(縦55ポンド、横52ポンド)のテンションで張ったときに、1本1本のストリングのテンションはどうなっているかという測定例が、掲載の図です。(市販の測定器なので定性的なものとみてください。)
 ストリング1本1本のテンションが異なるし、横糸はかなりテンションが低くなっています。
 テンションを2,3ポンド、上げたり下げたり注文しても、実際はどうなっているかはわからないので、むしろ面を弾いた音で判断する方が正確かもしれません。
(ご参考までに)
 図は、市販のストリングメーターMK-Ⅳを使用して張り上がり直後の1本張りと2本張りの定性的なテンション分布の実測結果例です。
 グラフの縦糸 (M)と 横糸 (X)のストリング番号をラケット面上において、縦糸の数字は中心線からの順番、横糸の番号は上からの順番を示しています。
 .横糸の張力(テンション)は縦糸より低くなっており, 1本張りは先端側の方が高め, 2本張りは根元側の方が高めになっています。
● ラケット仕様とストリンギング
 供試ラケット2本は,全長 680 mm, フェース面積 110 in2,質量 366 g(ス トリングスを含む),重心位置はグリップ端から325 mm,重心まわりの慣性モーメント16.9 g・m2,フレームの基本2節曲げ固有振動数が 132 Hz である.
 (本研究におけるストリンガーでもある著者の一人は、グランドスラム大会での長年の経験をもつ名張人で、川副研究室における供試ラケットはほとんど彼に依頼しました。
 前日に宅急便で送ると、翌日にストリングを張ったラケットが送られてきました。
 以下は、ストリンギングにおけるメモとの測定値です。)
 「ストリングスは 2709 MCS,ゲージ 1.32 mmであり,張り機 4002を使用して、 1本張り (クロスは下から張る)は縦 55 lb 横 52 1bで横糸にのみ圧 (Pre―stretching)を加えた。
2本張り (クロスは上から張る) も 55 lb/ 52 1bで横糸にのみ圧 (Pre― Stretching)を加えた.
クロスを 3 1bs落としてテンションジョーの反対側に圧を加えて 55で引いている時に 60程度の表示が出るくらいの力で圧を加えた.
 ストリング・メーカーの説明によると、縦糸のフリクションロスがあるからクロスの右左では数ポンドのテンション差があり,それを取るために引いている方の反対側に圧を加えるらしい。
 横糸に圧を加えたほうが横糸が一度強く引かれるため緩みが少ない。
市販の面圧計 RDCによる張り上がり直後の面圧は両者とも 69%, 24時間後は1本張りが 63 %, 2本張りが 64 %であった。
 また市販テニスコンピュータによる DT値は張り上がり直後は1本張りが 38,  2本張りが 37, 張り上がりから24時間後はそれぞれ 36と 35であつた。」
(参考文献)
川副嘉彦・桜井匠・一木公央,日本機械学会ジョイント・シンポジウム1999(スポーツ工学シンポジウム,シンポジウム・ヒューマンダイナミクス)講演論文集、No.99-41,pp.212-216。 (1999年)