テニスラケットの科学(239):スピンとストリング(37) :ストリング別のスピン結果 :プロとアマがアンダースピン(スライス)打撃した実測例

 図1_aはプロのアンダースピン打撃、図1_bはアマチュアのアンダースピン打撃の様子を示しています。
 プロのほうがやや前方(ネット側)でインパクトしています。
 図2は、プロとアマがアンダースピン(スライス)で球出しされたボールを打撃した場合のスピン挙動の比較です。
 ラケットには新品のナチュラル(天然)ストリングを張っています。
 プロの打撃では、アマチュアの打撃に比べてトップスピンの場合ほどの違いはありませんが、スピン量が多く(平均1.3倍)、打球速度も速く(平均1.25倍)、ボールとストリングの接触時間も長い(平均1.1倍)という結果を示しています。
 この場合のアンダースピン打撃におけるボールとラケット(ストリング面)の接触時間は、プロの場合は平均1000分の3.6秒、アマチュアの場合は平均1000分の3.3秒です。
 相手のボールが速いと、ボールとストリング面の接触時間はもう少し短くなります。
 プロは、打球速度が速いのに接触時間がやや長くなっているのは、スピン量が多いからです。
 ボールとストリングの接触時間が長いことは、インパクトでの衝突力の低減、および手に伝わる衝撃振動の低減も意味します。
 スピンを強くかけると衝撃が大きいと誤解されがちですが、スピン量が増すと正面衝突力が減って、ボールを回転させる成分が増えるので、腕へ伝わるインパクトの衝撃振動は低減します。

 試合の場合(対人)は相手の打球速度とスピン量が関係してきますので、インパクト諸量の値は図2とは多少異なります。

図1

図2