テニスラケットの科学(241):スピンとストリング(39) : ストリング別のスピン結果 :スピンがかかりやすいストリング素材 :「スパゲッティ・ストリング」と「滑りやすいストリング」のスピン性能の類似性

・ かつて「スパゲッティ・ストリング」ラケットを使って、世界ランク200位の選手が4位の選手を破ったことや、全米、全仏、全豪で優勝したギレルモ・ビラスがスパゲッティ・ラケットを使っていたイリー・ナスターゼとの決勝を途中棄権したことなどから論争が起こり、1978年にITFはその使用を禁止したという歴史があります。
 その後、ルールが改正されて、縦糸と横糸が交互に織られていないラケットはルール違反になりました。
 図1(a)、(b)は「スパゲッティ・ストリング」ラケットの模式図と写真です。
 グロメット穴に2本ずつ縦糸各16本を通して、さらにそれぞれをプラスチックの中空ローラーに通して太い横糸(5本)を両面から挟む形に張っています。
 S.GoodwillとS.HaakeはITF の協力を得て、スパゲッティ・ラケットのヘッドを固定して、ボールをストリング面に斜め衝突させてスピンの測定を行いました(40ポンド、70ポンドのナイロンストリング、ナチュラルストリングとの比較)。
 入射ボールはバックスピン量を変化させています。
 その結果が図2です。
「スパゲッティ・ストリング」ラケットは、ローラーがベアリングのように動いて縦糸が横糸面上で滑りやすく、通常のストリングを張ったラケットに比べてスピン量が約2倍になっています。
 また、図2はナイロン40ポンドと70ポンド、ナチュラル40ポンドと70ポンドの計4種類のストリング・テンションの場合を比較したもので、スピン量の差はほとんどなく、バラツキの範囲であることも示しています。
 したがって、この実験結果からもスピン増大はストリング面の縦糸と横糸が滑りやすいことが主な要因ということになります。
 図3は、史上最も有名なナスターゼとヴィラスのスパゲッティ・ガットによる試合風景です。

図1

図2

図3