テニスラケットの科学(244)
:スピンとストリング(42)
:プロのストリンガーも誤解しているインパクトにおけるストリングの挙動
:「子供や女性や初心者はポリエステルを張らない方がよい!」というのは迷信!

● インパクトにおけるポリエステルの特長
・ ポリエステル素材がナイロン素材より硬くても、フレームに比べたらはるかに軟らかい!
・ ストリング面の振動数は、フレームの振動数に比べたらはるかに高いので、ストリング面の振動は、フレームに伝わりにくい!
・ ポリエステルもナイロンも、インパクトでの力積はほとんど違いがない。
・したがって、反発力係数やボールの飛びも違いがない!

● (注釈)
 ポリエステルとナイロンの反発力、あるいは反発速度に違いがない理由① 
・衝突力と接触時間の積、すなわち力積が同じであれば、衝突後の速度が同じになります。
・衝突力が大きくなっても接触時間が短くなれば、力積に違いがないということになります。

●(追記1:補足説明)
・ ストリングは完全弾性に近く(衝突におけるエネルギ損失が非常に小さい)、ボールとストリング面の衝突における反発係数の大きさは、ボールの変形量の大きさに依存します。
・衝突力、あるいは反発力、あるいはテンション(張力)が大きいほど、ボールの変形量は大きいですが、 インパクトにおいて、 ストリング素材が違って変形量が違っても、ストリングの変形量が大きい素材(ナイロン)はテンションは大きくなり、ストリングの変形量が小さい素材(ポリ)はテンションも小さくなるので、 結局、 衝突力、あるいは反発力、あるいはテンション(張力)にはほとんど違いがなく、 ボールの変形量にも違いがないということになります。

●(追記2)
ポリエステルとナイロンのインパクトにおける面圧(面剛性)の違いについて
・ ストリング面の変形量(たわみ)が同じであれば、 素材のヤング率E(硬さ)が大きい方がインパクトにおける面圧(面剛性、反発力に影響)は大きくなりますが、 素材のヤング率E(硬さ)が大きい方が変形量は小さいので、 ポリエステルとナイロンの素材(ヤング率)の違いは、インパクトにおける面圧の違いにはほとんど影響しないことになります。

● ストリングの重量は15グラム程度なので、平均的なラケット重量 300グラムにくらべて小さく、しかも、 ストリング面の周辺はストリング面振動の節にあたるので、 ストリング面の振動が大きくても、ラケット・フレームの振動、特に手で握るグリップ部分の衝撃・振動は大きくはなりません。
・理論的な背景については、続稿で紹介させていただきます

図1

図2

図3

図4

図5

図6