テニスラケットの科学(255)の補足1 (ご参考までに)

● 1987年(邦訳2009年)に発行されたHoward Brodyの著書以来、「ストリング素材の摩擦が大きいほどスピンがかかる、テンションが強い(高い)ほどスピンがかかる」というのが従来の仮説でした
(その仮説がいつの間にか通説、常識になってしまいました!)。

 しかし、ボールがストリング面を転がったり滑ったりすれば摩擦は働きようがありますが、ストリング面上でボールがつぶれ、それが次第に復元しながらボールがストリング面を離れるとしたら、ストリングとボールの間の摩擦がスピンに影響するとは考えられません。

 また、丸い断面のストリング素材(たとえば図1(a))に対して、表面に凸形状を形成して摩擦を増やすことでスピン量を増大するという発想の「スピンガット」と称されるものが市販されてきました。
 しかし、ストリングはメイン(縦)とクロス(横)を交互に裏表になるように編んで張られているので(図1(b))、ストリング面にはゲージ径の大きさそのままの十分な突起がすでに形成されており、ゲージ径の10分の1にも満たないギザギザの突起形状が摩擦力に支配的であるというのも考えにくいのです。

扁平断面ストリングは、円形断面に比べて、ノッチ(溝)ができにくいという意味で、縦糸と横糸が滑りやすく、スピン量が増大するという可能性があります。(ストリングは張りにくいかもしれませんが?)