テニスラケットの科学(302) :プロのストリンガーも知らないストリング:「スナップバック」の源流と用語の起源(7) :New String Theory(新しいストリング理論)5

● ストリング研究開発の新しい展開
 2011年1月のAtlantic誌の記事 ”The New Physics of Tennis”(「新しいテニスの物理学」)は、コーポリ・ガット(ポリエステル系)がプロのテニスに及ぼす影響について人々の間に関心を呼び起こし、テニス界でこのテーマに関する議論を再燃させました。(Joshua Speckmanジョスア スペックマンを紹介する記事より)
 以下は、2011年1月22日のニューヨークタイムズ(The New York Times)のテニスブログ「ストレートセット(Straight Sets)」に掲載されたマクドナルド氏の記事を川副が翻訳したものです。
図3 解説記事           
「ラケットのガットとトップスピン」
ジェフ・マクドナルド*  (*ニューヨークタイムズ)     (訳:川副嘉彦)
” 1970年代に,アルゼンチンのギレルモ・ヴィラスがあるブランドのテニスガットを宣伝している広告が存在した.
 その広告はテニス雑誌に掲載され,おそらく彼自身の言葉という真実味を持たせるために,ぎこちないブロークンイングリッシュで書かれていた.
 その広告は,私の友人にとっても私自身にとってもかなり滑稽だったのでよく覚えている.
World Tennis誌とTennis誌の両方に掲載されたその広告の中で,ヴィラスは「ボールにスピンをかけられるよ」と言っていた.「このガットを使うと,思い通りにボールが飛ぶんだ」.
しかし皮肉なことに,1977年のクレーコートでのヴィラスの53連勝記録は,ボールを打つ音を出さずに驚異的なトップスピンを生み出す,スパゲッティ・ガットと呼ばれる魔のガットパターンによって破られることとなった.
 ボールが不自然にバウンドしたり,空中でのカーブや軌道の変化が見られたことも報告されている.
 ラケットの横糸に二重にガットを巻くことによって,ショットに従来よりも強いスピンと切れ味をもたらしたのである.
 その年の全米オープン(アメリカ版のクレーコートであるハーツルー(Har-Tru)コートで行われた)で,中堅のプレーヤーであるマイク・フィッシュバックがスタン・スミスを相手に番狂わせを演じ,ITFはついにスパゲッティ・ガットを禁止した.
 この禁止に先立ち,イリー・ナスターゼは,エクサンプロバンスのトーナメントでのヴィラスとの決勝戦でスパゲッティ・ガットを使用し,2セットを先取していた.
 激怒した「パンパスの雄牛」(ヴィラスはアルゼンチンのマスコミにこのように呼ばれていた)は,コートから激しい勢いで立ち去り棄権扱いとされた.
 現在に立ち戻ると,トップスピンを武器とするもう1人の逞しい左ハンドのプレーヤー,ラファエル・ナダルがテニスを支配し,ガットに関する議論は再燃している.
 The Atlantic誌*3に掲載された素晴らしい記事の中で,ジョシュア スペックマンはコーポリ・ガット(ポリエステル系)によって生み出される驚異的なスピンについて書いている。
 ほとんどすべてのトッププレーヤーが使用しているこの新しいガットは、これまでよりもはるかに強力なスピンとラケットヘッド速度*4が得られる。
 スペックマンは、今日の強力なトップスピンと1970年代のスパゲッティ・ガットの類似性を指摘している*5. 
 1978年のITFによるスパゲッティ・ガットの禁止は、テニスにおける技術革新をITFが禁止した最初にして唯一のものであった。

*4 この記述は正しくない.ラケットヘッド速度はガットには影響されない.ラケットの振りやすさに依存する。(川副コメント)
2011年1月22日、ニューヨークタイムズ(The New York Times)