テニスラケットの科学(4)  
ストリング:取り付け時のテンションとインパクトにおけるテンション

一般にストリング・テンションと呼ばれるのは、物理的には、ストリングを張った時の初張力(取付荷重、たわんでいない状態)で、図のS0 のこと、
インパクトにおける実際のテンションS との違いがわかれば、後はスキップしてもよいです。

一般にストリング・テンションと呼ばれるのは、物理的には、ストリングを張った時の初張力(取付荷重、たわんでいない状態)で、図のS0 のことです。

インパクトにおける実際のテンションSは、

S = S0 + ( A E / 2 L s 2) X 2

と書けます。ただし、
S0:初張力、すなわち、ラケットに張ってあるストリングのテンション、
LS:ラケットヘッド・サイズ、
A:ストリング・ゲージ太さ、
E:ストリング素材強度(ヤング率)、
X:変形(面に直角方向のたわみ)量です。
インパクトでは、第1項のテンションS0は、第2項(たわみ変形によるテンション)に比べて小さく、無視してもインパクト挙動に大きくは影響しません。
テンションS0は、40~60ポンドが一般的ですが、テンションSは、S0の数倍(200ポンド以上)になります。
面圧(物理的には正しい表現ではない)と呼ばれるのは、ストリング面(バネ)剛性のことで、
Ks = S 0 ( 2 / L S ) + 3 ( A E / LS 3) X 2
と書けます。
インパクトでは、テンションS0を含む第1項は第2項に比べてはるかに小さくなります(川副ら1997)。
打球に関係する「武器としての性能」に影響するのは第2項です。
ボールがストリングを離れたインパクト後のラケット残留振動に関係する「弦楽器としての性能」に影響するのは第1項です。これが打球感として残ります。
ボールとストリングが接触している時間は、トッププロでは、2~3/1000秒程度(衝突速度が大きいほど短い)ですので、その間にプレーヤーが感知するのは難しく、ボールは勝手に飛び出していきます。

1-画像:ストリングを張った時の初張力(取付荷重、たわんでいない状態)S0 とインパクトにおける実際のテンションS 、2018-02-03 川副研」