テニスラケットの科学(438) :プロによるフォアハンド・トップスピン打撃におけるインパクト近傍のラケットの軌道とボールの変形、直線速度、スピン速度を見る!  ➂まとめ  インパクト直前からインパクト直後までのラケットの軌道とボール速度(直線速度とスピン速度)を見る!  連続写真を 0.25/1000 秒間隔で示しています

● インパクトにおける現象は目に見えないので、プロでも誤解が多いようです。
・ 参考までに、再度、連続写真(画面をクイックして進めることができる)をアップします。
・ 画像を止めて見ることができるので、ボールとラケットの衝突におけるボールの変形や直線速度、スピン速度の変化など、インパクトの現象を理解しやすいのではないかと思います。
● 連続写真(*)は、手出しのボールをプロのプレイヤーがトップスピン打撃した場合で、ボールがラケット・ストリングに接触するインパクト直前からストリングを離れた直後までの挙動を、毎秒2万コマ (20000 fps) で撮影したものを、0.25/1000 秒間隔で示しています。(NHK放送技術研究所の協力)
 
● ボールに回転トルク(ボールを回転させる接線方向の力)が与えられて,約1.5/1000 秒後にボールはゆっくり回転し始め、ストリングを離れた後に回転が加速し、回転量(回転角速度)が最大になるまでには少し時間がかかります。
● インパクト(接触時間)の間に,ラケット面中心が移動する距離は4~5センチ(cm)程度です.
●  手出しのボールを打撃しているので、打球前のボール速度は5m/s以下、スピンはほとんどありません。
●  この実験では、
 ・ニューボールをトップスピン打撃した場合、打球速度は平均時速 82km/h、スピン速度毎分 3120rpm。
 ・使用済みのボールをトップスピン打撃した場合、打球速度は平均時速 123km/h、スピン速度毎分 960rpm。
 ・この実験では、トップスピン打撃なので、ニューボールでもスピン量が多いので、打球速度は使用済みボールの場合より遅くなっています。
 ・ 逆に、トップスピン打撃では、使用済みボールはスピン量は大きく減少しますが、打球速度は増す結果になっています。
   使用済みガットの方がコントロールが難しいとしたら、このことも理由の一つかもしれません。
・ストリングはナチュラル・天然ガットを使用しています。


(参考文献) 
・テニスラケットの科学(182)
・テニスラケットの科学(16)
・Yoshihiko KAWAZOE , Yukihiro TAKEDA and Masamichi NAKAGAWA,
“Effect of Notched Strings on Tennis Racket Spin Performance
 (Ultrahigh-Speed Video Analysis of Spin Rate, Contact Time, and Post-Impact Ball Velocity)”,
Journal of System Design and Dynamics, Vol.6, No.2, pp.213-226, (2012)
・川副 嘉彦,中川 慎理,上杉 昭二,
新・テニスの物理学 (ストリングとスピン打法によるパフォーマンス向上と障害低減)
日本機械学会・年次大会 : Mechanical Engineering Congress, Japan、 2011、 p.”J231024-1″-“J231024-5”