テニスラケットの科学(44) テニスは本質的に非線形(カオス)の世界

日常生活(現実)は,非線形(複雑系・カオス)の世界です。原理はシンプルですが、現象は複雑です。春夏秋冬、朝昼晩。半ば規則的、半ば不規則、何回繰り返しても、一度たりとて、同じ春、同じ朝はありません。何が起こるかわかりません。

一瞬の大変形が特長であるテニスのインパクトも同じです。
プロのショットに再現性があって完璧に同じように目に見えても、微細に視ると、厳密には、微妙に異なっているはずです。
ストリング・テンションの影響が昔から多くのプレーヤーの関心事ですが、張り上がったラケットを使って、ボールとラケットの衝突実験を繰り返すと、テンション(衝突前の初張力)は落ちていきますが、
過去の研究には、跳ね返り速度もスピン回転速度もバラツキの範囲で微妙に高くなったり低くなったりするという結果が見られます。
ボールの反発係数は一定ではなく、衝突速度あるいは変形量が大きいほど低下するという非線形が特長です。

動画1,動画2は、模型の鉄棒ロボットです。力学的には、二重振子(2自由度)の非線形・強制振動(電磁石と永久磁石の反発により強制力を与える)です。
模型の鉄棒ロボットが大きい初期角度を与えられて大車輪を行っています。

画像は、模型の鉄棒ロボットが大きい初期角度を与えられて大車輪を行うときのほぼ1回転の間のコマ写真です。条件が一定であるのに、1回転の周期が(a)の場合は 0.51 秒、(b)の場合 0.70 秒です。
振幅も毎回微妙に異なり,周期性と無秩序さが同居する複雑系であることを示しています。

人間の体操選手の場合も同様ですが、練習によって習熟して来ると、毎回ほぼ一定の周期になりますが、厳密に測定したら、毎回、微妙に異なるでしょう。

*高校物理の教科書には、振り子の周期(1往復の時間)は、振り子の長さで決まると書いてあります。これを線形近似と言います。しかし、これは、振り子の振幅(振れ幅)が非常に小さい場合だけに近似的に言えることで、一般的には非線形で、大振幅になるほど、振幅が周期に関係します。

* 最もシンプルな「二重振り子 (大) で観測されるカオス現象」についての動画

1-動画:模型の鉄棒ロボット。力学的には、二重振子(2自由度)の非線形・強制振動(電磁石と永久磁石の反発により強制力を与える)

2-動画:模型の鉄棒ロボット。測定した動画。

3-画像:模型の鉄棒ロボットが大きい初期角度を与えられて大車輪を行うときのほぼ1回転の間のコマ写真
(川副ら2010)