テニスラケットの科学(482) (備忘録)2019年2月2日投稿 :昔?『スピン・ガット』と言って
「昔?『スピン・ガット』と言って表面がギザギザのナイロン・ストリングが市販されていたので、軟らかいナイロンの方がポリエステルよりスピンがかかるのかと誤解していました!」というシニアのテニス仲間からコートでコメントをもらいました。
このように誤解している人は多くて、国際テニス連盟(ITF)や米国プロ・ストリンガー協会なども誤解の理由を、10年前に、実験に基づいて説明しているのですが、興味のある方は、とりあえず、下記ホームページをご参考に!
研究紹介(川副研究室)
事例2:テニスの新しい物理学
ラケットのスピン性能のメカニズムとスピン打撃実験:ツルツルで硬く,張りあがりの新しいストリングほど,スピンがかかる
https://kawazoe-lab.com/…/performa…/performance-prediction3/
(要約すると、)
1.従来の仮説とは逆に,ストリング表面の摩擦が小さいほど,トップスピン打撃において縦糸と横糸の交差点がずれてボールが食い込み,縦糸が戻るときのストリング面内復原力によりボールのスピン量が増す(スナップバック効果).
2.縦糸と横糸の交差点にノッチができたストリングスでも,交差点を潤滑すると,ボールのスピン量が回復し,接触時間も長くなる(図1,図2, 図3).
3.接触時間が長くなると,ラケットや手に伝わる衝撃振動も低減する.
4.すでに世界のほとんどのトップ・プレーヤーは、天然ガットよりもツルツルで硬いポリエステルを使っている.
プロの試合の場合、1セット後のガットには交差点に深い溝ができており,トップ・スピン打撃において,縦糸の横方向へのズレと戻りによる面内復原力(スナップバック効果)が少ないために,スピン量が顕著に低減し,接触時間も短くなっています.
スピン量が少ないために,インパクト直後の打球速度は速く,したがって,強打した時のボール・コントロールが難しくなります.
参考文献:
Kawazoe Y. et al., Effect of Notched Strings on Tennis Racket Spin Performance: Ultrahigh-Speed Video Analysis of Spin Rate, Contact Time, and Post-Impact Ball Velocity, Journal of System Design and Dynamics, Vol.6, No.2, pp.213-226, (2012)