テニスラケットの科学(510)
(備忘録)2020年12月12日投稿
テンションとプレイのマッチング 1995年版(2)  :Part 1 最適テンションを見つける前に,知っておきたいこと

(備忘録)

“ 一般には,テンションが低いほどボールは飛び,高くなれば飛びは抑えられると言われている.
 しかし実験では,かならずしもそれを裏付けるデータは出ていない.
 純粋にテンションだけの影響を調べた場合には,テンションの高低差によるボールの反発の差は,むしろ少ないとのデータもある.

“ 一般には,テンションが低いほどボールは飛び,高くなれば飛びは抑えられると言われている.
 読者の方の中にも,その説をもとに,自分のプレイスタイルやパワーを考慮して,テンションを決めている人も多いだろう.
 だが,本誌の連載「テニスの科学」では,一概にその説が正しいとは言い切れないとの研究データが報告されている.
 ある実験で,ラケットヘッドを固定して,純粋にストリングの影響だけを調べてみた.
 その結果,テンションの高低差によって,ボールの反発に違いが出ることは,むしろ少ないとのデータが出ている(ただし,それには条件がある.詳細は55ページより)
 また違う機会には,人間がラケットを手にしスイングするという,実際と同じ条件で実験を行った.
 そのときの結果は,次のようになった.
 ・ハードヒットする人では,テンションが高い方が,ボール速度は大きくなる.
 ただし,65ポンドが限度で,それ以上強く張ると,逆にボールの速度は落ちる.
 ・ゆっくり打つ場合は,テンションが低い方がボール速度は大きくなる.
  ただしこの実験は,人間が行っていることなので,毎回,同じ力のスウィングとはなっていないはずだし,――――― その点で厳密とは言いにくい.

“ ただいずれにせよ,実験では,「ストリングを緩く張るほどボールの飛びはいい」という説を,全面的に裏付けるデータは出ていないのである.
 ということは,もし読者の方がこの説をもとに自分のテンションを決めているのだとすれば,それは最適ではないかもしれないことになる.
 しかしその一方で,低いテンションと高いテンションで反発が違う,との印象があるのも厳然たる事実だ.
 本誌編集部内でも,実験結果に実感がわかないとの意見もあった.

“ このように,プロ,一般プレイヤーなどの技術のレベルを超えて,テンションはボールの反発に大きく影響すると考えられているのが現状だ.
 しかし,実験では,かならずしもそのようなデータは得られていない.
 このギャップは何だろうか.
 今回の技術特集では,「トッププロの使用テンションとそのプレイスタイルの傾向」,「高いテンションと低いテンションのメリット,デメリット」,「トッププロのテンション微調整の具体的条件」などを徹底追及.そこから,前述のギャップを埋めつつ,各々にとっての最適テンションを探ってみた.
 協力してもらったのは,ジャパン・オープンやセイコー・スーパーだけでなく,世界の国際大会でトップ・プレイヤーのストリングを手がけるストリンガー,テンションに細心の注意を払う現役のプレイヤーやコーチ,そして,「テニスの科学」でおなじみの研究者の面々である.
” 
(参考資料)
特集 テンションとプレイのマッチング,
テニスジャーナル 1995年10月号, pp.18-19.