テニスラケットの科学(557)
:コーポリ・ガット(ポリエステル系ストリング)
:実際にはどのような仕組みで機能しているのか(解説記事紹介)②
:本質的変化
● 本質的変化
2007年の全米オープンの決勝戦で勝利を収めたロジャー・フェデラーは,男子プレーヤーのゲームはコーポリ・ガットによって戦術の変化を迫られ,攻撃的な選手がネットからベースラインへと後退せざるを得なくなったと語っている.
長年に渡ってピート・サンプラスのガット張りを担当したことで知られ,現在ではフェデラー,ジョコビッチ、マレー,それにAPTランキング上位30人のうちの13人のラケットやガットの技術者を務めているネイト・ファーガソンは次のように述べている.
「近頃じゃ、ネットに詰めたら完全に終わりだよ」.
「ラファと対戦するときは誰でもそうだけれど,ボールが自分の足下で急降下するかどうかが問題ではないんだ. スピンのかかったボールをラケットで受けてボレーしようとしても難しすぎるんだよ」.
ファーガソンによれば,これは強くトップスピンのかかったボールのペースや軌跡だけの問題ではない. ネットプレーヤー自身のガットの反応も問題となる.
「たとえば、ネットプレーヤーがルキシロン製のガットを使用しているとする. その場合,やってくるボールはガットに当たると普通とは異なる反応を示す. これはボールのガットへの食いつき方が異なるからだ. だから、狙ったところにボレーを返すことは難しい」.
攻撃的な選手にとって不幸なことに,コーポリ・ガットと強いスピンの隆盛は,1990年代にITFが時速130マイルを超えるファーストサービスの攻勢に対する対抗措置を講じようとしていた時期と重なっていた.
コート面が遅く,ボールが重くなれば,試合中に選手がボールを打ち返しやすくなる. しかし、ボレーを決めるのは難しくなる.図2 ラファ(ラファエル・ナダルの愛称)のような選手のスピンをボレーするのは、以前よりもはるかに難しくなっている.
(参考文献)
・(解説記事) コーポリ・ガット(実際にはどのような仕組みで機能しているのか)
ジョシュア・スペックマン (訳:川副嘉彦)
埼玉工業大学工学部紀要 / 埼玉工業大学図書・紀要委員会(編) 第22号 2011年 pp. 37-45.