テニスラケットの科学（581）
：テニスラケットの科学（460）の補足２
：ラケットの性能とプレーヤのパフォーマンスの関係①：Q＆Aより
● テニスラケットの科学（460）に関連して、とても良いご質問がありましたので、Q&Aとして紹介させていただきます。
Q: 2000年前半と2010年と2020年の振り方は結構変わっていますが昔のデータは参考になれますか？
A:（川副回答）
・ 「２０００年頃と２０２０年（最近）では、振り方（テニスのプレー・スタイル）が変化しているが、２０００年頃のデータは今でも参考になるか？」
というご質問かと思いますが、結論は、イエスです！
＊（ご参考までに）例として取り上げたラケットのスペックは、現在、最も売れている黄金スペックと呼ばれているラケットに相当します。
https://kawazoe-lab.com/tennis_racket/science-of-tennis-racket-49/
・ ボールの飛びの性能は、ラケットの反発性能（跳ね返りの良さ）とラケット・ヘッドの速さで決まります。
・ラケットの反発性能は、２０００年頃にはすでに剛性は十分で、主に重量配分で決まりますが、２０００年と２０２０年とで、反発性能の違いは、ほとんどありません。
・重量配分設計の変革により反発性能を維持しながらラケットが軽量化したことと、スピン性能と耐久性の高いポリエステル・ストリングの採用により、プレーヤーのスイング（ラケット・ヘッド）の速さが増し、プレーヤのパフォーマンスが、ラケットの進化を間接的な要因として、ラケットの進化をはるかに超えて、向上したと考えられます。
・ ラケットヘッドの速度が増すと、打球速度もスピン量も増大します。
・ 学術的な研究成果が世の中に広く浸透・普及するには、20年以上かかるとよく言われますが、テニスラケットも同様のようです（？）。
ボールの飛びに関するラケットの性能設計法は、２０００年頃には、ほぼ完成しています。
超軽量と呼ばれるラケットが市販されるようになったのは２０００年以前ですが（最軽量ラケットはフレーム重量２００グラム）、当時市販されたラケット（フレーム２７５グラム、張り上がり２９０グラム）とほぼ同じ仕様・性能のラケットは、現在でも多く市販されています。
超軽量・トップヘビーのラケットが登場した当時、NHK高校物理のサイエンス・コーナーで運動量の応用として、「テニスラケットの力学」を紹介させていただいたのですが、そのときの軽量型のデータはフレーム重量２７５グラム（張り上がり２９０グラム）ですが、司会者の質問に対して、「もうちょっと重め、張り上がりで３００グラム以上の方がよさそう」と川副が答えていますが、これが、現在、最も売れている黄金スペックと呼ばれているラケットに相当します。
図１：ボールの飛びに関する性能設計（概要）
https://kawazoe-lab.com/tenn…/science-of-tennis-racket-49/
図―1
図２：プレーヤのスイング・モデル（最もシンプルな正面衝突モデル）
図―２
図３：飛来するボール速度とスイング軌道（インパクトにおける速さと角度）、ラケット面の傾きを与えた場合の打球速度とスピン量を算出するためのモデル
図―3
● スピン量と打球速度はインパクト（１０００分の３～５秒）で決まる➂
：打球速度とスピンが生まれるインパクトの原理
（例）インパクトにおけるラケット面の角度と打球速度とスピン量の割合、
（例）ストリングのスピン性能の劣化と打球速度の増大、
などの例については、ベクトル図を用いて別稿において紹介させていただく予定です。
（参考資料）
・ テニスラケットの科学(49) 高校物理 運動量 テニスラケットの力学(5) | 川副研究室-KAWAZOE-LAB
https://kawazoe-lab.com/tennis_racket/science-of-tennis-racket-49/
・ テニスラケットの科学(459) 研究の思い出：機械系学生の情報誌・メカライフ特集：「スポーツ工学」（1996年） ：テニスのインパクトの謎を解く (概要：その７) | 川副研究室-KAWAZOE-LAB
https://kawazoe-lab.com/tennis_racket/science-of-tennis-racket-429-2/
・ テニスラケットの科学(459)の補足１ 研究の思い出：機械系学生の情報誌・メカライフ特集：「スポーツ工学」（1996年） ：テニスのインパクトの謎を解く (概要：その７) | 川副研究室-KAWAZOE-LAB
https://kawazoe-lab.com/tennis_racket/science-of-tennis-racket-459-h1/