テニスラケットの科学(670)
: 伊達公子さんのラケット論・ストリング論
: ストリングのテンションは感覚。ウインブルドン準決勝では通常よりかなり低かった*

 伊達公子さんの「ラケット論」*に続く「ストリング論」です。
 伊達公子さん執筆の記事**を大変興味深く拝読しました!
 ストリングの広告やカタログなどによる先入観ではなく、自分の感覚を重視する自然体の「ストリング論」ですね!
 自らの深い経験に基づく伊達公子さんのとてもシンプルで本質的なストリング論ですね!

 (以下抜粋引用**です)
“ テニスラケットはストリングによって感触が違ってきます。
 私がストリンガーさんにリクエストしていたのは、反発がありつつも食いつく感じにしてほしいということでした。
 ラケット自体は硬い方が好きでしたが、手元の感じは球持ちが良い感じがほしかったんです。
 以前はナチュラルガットだけを張っていましたが、セカンドキャリアの時から、縦ポリに横ナチュラルガットに変更しました。
 自分が思い描いている通りのボールを少しでも高い精度で打てることを求めて、色々とセッティングを試した結果、これに決めました。
 ファーストキャリアの時のテンションは58~63ポンドぐらいと、かなり高かったです。
 セカンドキャリアでは、ずいぶん下げました。
 ラケットの進化ももちろんですが、テンションも時代によって傾向がありますね。
 昔はストリンガーさんによって、同じテンションでお願いしても違いがあったものです。
 そのため大会会場に行くと、その土地の気候とストリンガーさんの張りに合ったベースのテンション探しから始める必要がありました。
 1996年ウインブルドン準決勝の時は、テンションが43でした(笑)。
 疲労の影響もあったかもしれませんが、当時の私ではありえない低さです。
 でも、ストリンガーさんの張り方との感覚になってくるので、数字が全てではありません。
 その時は常に硬く感じていたため、心地良いところまで下げて行ったら、43になったんです。
 今はストリングマシンの性能が上がり、張る人によっての違いが少なく、気候やサーフェス、体調に合わせて微調整するぐらいで比較的、ストリングスの調整にかかる時間は短くなってきているように思います。
 張り替えのタイミングですが、大会期間中は毎日張り替えます。
 フレッシュな状態が好きなので、必ず試合当日の朝に張ってもらうように依頼していました。
 朝張りに関してはファーストキャリアではなかったこだわりです。
 セカンドキャリアでは、みんなが当たり前のようにストリングの張りにこだわるようになっていたので、自然と自分でも考えるようになっていきました。
 ただ、ぐりぐりにスピンをかける人とは違い、私の場合はフラット系なのでストリングが切れることがほとんどありません。
 ボールチェンジのタイミングでもラケットを変えないため、試合には2本か3本準備しておけば大丈夫でした。
 ラケットとストリングの組み合わせは無数にあります。
 同じラケットでもストリングを変えるだけで、違った印象になります。
 もしかしたら、ラケットの性能を最大限に生かすことができたり、ラケットの違った一面を感じられるストリングやテンションがあるかもしれません。
 多くの選択肢があるので、色々と試すことで新たなテニスの楽しみ方ができるのではないでしょうか。
*引用記事:
・【伊達公子】時代に合わせて変えたラケット。譲れないこだわりはグリップ<SMASH>
伊達公子  2024.04.05
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン 
 https://thedigestweb.com/tennis/detail/id=78999
**引用記事:
・【伊達公子】ストリングのテンションは感覚。ウインブルドン準決勝では通常よりかなり低かった

<SMASH>| THE DIGEST
https://thedigestweb.com/tennis/detail/id=79002
2024.04.12
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

(参考記事)
テニスラケットの科学(669):
 伊達公子さんのラケット論:
 譲れないこだわりはグリップ*

 伊達公子さん執筆の記事*を大変興味深く拝読しました!
 ラケットのほとんどの広告やカタログには、 自分の感覚より飛ぶとか、想像以上にスピンがかかるとか、想像と異なることが良いことのように (反発力やスピン量の実測データは無いにもかかわらず?)書かれていますが、 伊達公子さんは、 自分の手が感じるフィーリングと実際のボール(リアル性能?)との誤差が少ないことを重視されています。
 ボールコントロールがしやすいからです!
 本来、自分の手が感じるフィーリングと実際のボール(宣伝広告の性能ではなく、リアル性能?)は、一致するはずですね!
 深い経験に基づく納得のいく伊達公子さんのラケット論ですね!
(以下抜粋引用*です)
” 高校に入ってから先生に勧められて使っていたのが、ヨネックスの『R-22』。続けて『R-24』、『R-50』と使用し、少し硬めの『R-50』が一番好きでした。

” セカンドキャリアの時は、ラケットの飛びがよくなっていましたね。最初に使った『RQiS2 Tour』が大好きでした。
 これは海外の選手もみんな気に入っていました。
 手でコントロールできる感じが良かったことを覚えています。
 ラケットを選ぶ時の基準はフィーリングで、回転のかかりやすさやボールの収まり具合も確認します。
 自分の手のフィーリングと実際のボールとの誤差が少ないことも大切です。
 ギャップが大きいほどコントロールが難しくなります。

” 私は手が大きい方なので、グリップは太めです。
 ファーストキャリアの最初の頃に、細めのグリップを使い手首を痛めそうになったことがあったので、太めに変えました。
 現在もグリップエンドに向けて太くなっていく形状です。
 グリップにはこだわっていました。
 私は人差し指のひっかかりを重視しており、人差し指の部分にだけ極端にくぼみができるように作ってもらっていました。
 その感覚、位置もしっかり理解してもらわないとダメなので、ラケットの元グリップは常に同じ人に巻いてもらっていたほどです。
 オーバーグリップテープは必ず自分で試合前に巻きました。
 元グリップのくぼみに合わせて同じように巻くことで、より引っ掛かるようにしていました。
 その日の調子に合わせてグリップテープの引っ張り具合も変えるため、自分の感覚が重要で人任せにはできない作業です。

” 引退後はラケットのこだわりはかなりなくなりました。
 そして、重さもグリップの太さも、当然ながら現役のままではつらくなってきます。
 今は、現状に合ったカスタマイズを模索しているところです。
 テニスを長年しているとマンネリ化することもあるので、ラケットを変えるというのは気分転換の1つになります。