テニスラケットの科学(759)
:テニスラケットの科学(758)の補足1
:(備忘録) イチロー選手の学習の包摂構造化と巧みさの創発

 イチロー選手の学習の包摂構造化と巧みさの創発*

 野球の達人・イチロー選手の巧みさの発達は上記*のリハビリに似ています。
(a) 日本における1994年の大記録210安打(ボールにバットを当てる技術)の翌年、さらに
(b) 本塁打と打点を飛躍的に伸ばした(遠くへ飛ばす技術)。
(c) 大リーグ2年目の開幕戦2試合のヒットは、いずれも「追い込まれて」から打った「決して綺麗ではない」ヒットだったとい言います。
 彼がオープン戦で絶好球をあっさり見逃していたのは、わざとツーストライクに追い込ませておいて、そこからの対応を試すためだったそうです。
「やるべきことを一つ一つ積みあげていくのです。
 そうすると、そうしようと思わなくても、結果は出てくるのだと思う」と語っています。
 公式戦で遭遇した課題をキャンプで学習して包摂構造化して要素行動として積み上げているように見えます。
 「やるべきこと」とは、要素行動(エージェント)に相当します。
 さらにイチロー選手の巧みさは発達します。
 3度目の20試合連続安打(球団初)、左腕との対戦打率が3割8分3厘、常識を覆すようなデータについて
 :「どうしてか僕はよくわからない(首をかしげる)」、「それぞれの特徴はピッチャーによって違うもの。
 そこは(情報として)頭に入っている。」
 一試合5安打(大リーグで自身初)に対して
 :「結果は特別。
 でも、そこ(打撃の状態)で感じているものは特別ではない」。
 「絶好調の定義にもよるが、すごくいい状態がどういうものかよく分からない」。
 「ボールが止まって見えるのでは」の問いに対して
 :「止まっていないものが止まって見えるのは明らかに特別でしょう。
 僕には、(ボールが)常に、それもやたらと動いて見えるよ。」
 新人から4年間での大リーグ最多安打記録(75年前)を破る841安打を打って
 :「(周りに)驚かれているならまだまだ。
 驚かれないようになりたい。」
 頭部死球(あと数センチで致命傷だった)後の4季連続200安打
 :「打席で怖いと思ったことはない。それはこれからもないでしょう。」
 8月は56安打(月間最多安打、68年ぶり)に対して
 :「言うことがなくなってきましたね。
 どうしようか。」
 今期3度目の1試合5安打
 :第1、2打席と内角球を流し打たれた左腕ピッチャーは、外角を意識した配球に切り替えた。
 しかし、3打席目は粘られた末の10球目を右前打された。
 直球、スライダー、チェンジアップにカーブと豊富な球種をことごとくファールされ、最後は意表をついて横手から投じた内角スローカーブを運ばれた。
 相手捕手は
 「もう投げる球がない。
 君に投げる球などないよ。」

● イチロー 選手に見える包摂構造
(1) 1994年(日本):大記録210安打
 ⇒ 包摂構造(SA)1:ボールに当てる技術
(2) 翌年:さらに本塁打と打点(飛距離)を飛躍的に伸ばした
⇒ 包摂構造(SA)2:当てる技術を持続しながら、遠くへ飛ばす技術
(3) 大リーグ1年目:いきなり数々の賞と記録
 ⇒ 包摂構造(SA)3:当てる技術、飛ばす技術を持続しながら、環境が変わっても打つ技術
(4) 大リーグ2年目:開幕戦2試合のヒットは「追い込まれて」から打った「決して綺麗ではない」ヒット
 ⇒ 包摂構造(SA)4
:当てる技術、飛ばす技術を持続しながら、追い込まれてから打つ技術
(5) 「やるべきことを一つ一つ積みあげていくと、そうしようと思わなくても、結果は出てくる。」 
 ⇒ 包摂構造(SA)5
(6) 「一喜一憂は、まわりがすることで、僕がすることじゃない」 
 ⇒ 包摂構造(SA)6
(7) 3度目の20試合連続安打 (球団初) 2004.7.29 朝日新聞
 左腕との対戦打率が3割8分3厘
 :常識を覆すようなデータについて
 :「どうしてか僕はよくわからない(首をかしげる)」、「それぞれの特徴はピッチャーによって違うもの。そこは(情報として)頭に入っている」
 ⇒ 包摂構造(SA)7
(8) 新人から4年間での大リーグ最多安打記録(75年前)を破る841安打  
 2004.8.13 朝日新聞「(周りに)驚かれているならまだまだ。 驚かれないようになりたい」
● イチロー選手の場の哲学*
・「特別な目的は持たないが、こういう場所に来れば見えてくるものがある。」
 (大リーグ・オールスターでのイチロー選手 )
・「見るも良し、見ざるも良し、されど我は咲くなり」
という作家・武者小路実篤の世界も、古くからあります。


(参考記事)
*
・超ロボットの壁(学習の包摂構造化と創発)
達人の巧みさに見える包摂構造と創発(学習の包摂構造化)
(川副研究室)
https://kawazoe-lab.com/…/intellige…/intelligent_robot4/
・知能ロボットの知性の創発
(生き物・人間の巧みさと包摂構造からのアプローチ)
川副嘉彦、
埼玉工業大学工学部紀要,第13号,pp.13-23, (2003)”
https://kawazoe-lab.com/research/tinourobotto-3/

・人間の巧みさの発現と包摂構造
(スポーツにおける巧みさへのアプローチ)
 川副 嘉彦、
 Dynamics & Design Conference 2003講演論文集, 2003, CD-ROM論文集、日本機械学会、pp. ””459-1″”-“”459-6″”
https://kawazoe-lab.com/research/ningennotakumisa/