テニスラケットの科学(864):
(備忘録;解説記事 2003年)
材料が変えてきた用具とパフォーマンス
-テニスを例にして-*(その3)
Tennis Equipment and Performance
-Transformation Through Material Evolution –
*川副嘉彦,日本機械学会誌,第106巻,1010号 (2003), pp.13-15.
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4 材料が変えてきたラケットとパフォーマンス
一般にラケットに求められる基本的な性能は,ボールの飛び(ラケットのパワー),コントロール,打球感といわれている.
「玉離れが良い」,「ホールド感がある」,「面の安定性が良い」など,微妙な性能の違いを評価する表現もある.
一方,障害と用具の問題は複雑であるが,テニス肘になりやすいラケットが存在することを多くのプレイヤーは経験的に認めている.
静止ラケット(ヘッド速度VRo=0)にボールを衝突させたときのボールの跳ね返り速度 VB と入射速度 VBo の比 e を実測し,反発性能を評価することが多い.
これはラケット自体のはじきの良さを表すので反発係数と区別して反発力係数と定義する.
ラケットでボールを打撃する場合は,インパクト直前のラケット・ヘッド速度をVRo,衝突直前のボール速度をVBoとすると,打球速度VB は,飛んでくるボール速度による反発速度成分 e・VBo と プレイヤーのスイングによる速度成分 (1+e)VRo との和になる.
女子トップ・プロのラリーにおけるフォアハンド・グランド・ストロークを想定して,肘と手首の関節角度を一定にして,
肩関節トルク Ns = 56.9 N・m を与えたときのラケット・ヘッド速度 VRo で VBO = 10 m/sで飛んでくるボールを打撃する場合のラケット性能を予測する.

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図2は,木製ラケット(図1(a))と標準的な軽量・高剛性・複合材ラケット(図1(b))の反発係数erである.
横軸はラケット面の長手方向打点位置を示す.
ラケット面先端での反発係数が著しく向上している.
反発係数は玉離れの良さに相当する.
図3は,ボールの飛びを示す.
反発力係数 e はほとんど向上しないが,ヘッド速度の増大により軽量・高剛性ラケットの打球は速くなっている.
同一重さで打球面サイズ(面積)が異なる軽量ラケット(図1(b),(c),(d))のボールの飛びは,打球面が広くなるほど,反発係数 er はオフセンター打撃で特に低下し,ヘッド速度もやや遅くなるが,反発力係数が高いから打球はやや速くなる.
最軽量ラケット TSL(図1(e))のボールの飛びを標準的軽量ラケット120A(図1(d))),従来型重量バランス EOS 120H (120 in2, 354 g)と比べると,ヘッド速度は大きいが,反発係数および反発力係数が低下するために,ラケット面中心から先端側で飛びが悪くなる.

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図4は,最軽量ラケットTSLで打撃したときの手首関節(図5)の衝撃振動ピーク値が著しく大きいことを示す.
軽量化の行きすぎである.
滑車でストリングスを支える ROLLER(図1(f))やグロメット(ストリングスを通す小穴に取りつけた鳩目のようなもの)の部分でストリングスが滑らない構造にした「マッスルパワー」,
圧電素子をフレームに組み込んだ「インテリ・ファイバー」(図1(g))は,手に伝わる振動を低減しようという試みである.
ラケット ROLLER と「インテリ・ファイバー」の衝撃振動は,最軽量ラケット TSL(図1(e))に比べると低減されたが,標準的軽量ラケット 120A(図1(d)))と同程度であり,十分には低減されていない.

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