テニスラケットの科学(97)  テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(4):地面を蹴る動きについて

「チカラの源は地面を蹴る力(反力)にある!」、「地面からの力を100%もらう」、「自分の体重を一度地面にぶつけ、その反動で戻ってきたパワーをボールにぶつける」、「スピードアップの簡単な方法:地面を蹴って反発力を生み出す」、「地面を蹴るほど速くなる」
などのコメントが数多く見られますが、(異見あり!)です。

 地面を蹴る力の反力は、重力に逆らう上下方向の力ですから、前方にボールを飛ばすテニスの場合は、特に、エネルギ損失が非常に大きく、効率の悪い打法ということになります。

直立二足歩行ロボットを用いた実験で、エネルギ消費が少なく、摩擦や凹凸の大小など地面の状態に影響されにくく、滑ったり転倒したりしにくい俊敏な身体操法について考察し、フットワークの改善策を提案したことがありますので(画像1)、紹介させていただきます(テニスラケットの科学(98)にて)。

画像2は、地面を蹴らないで、重力を利用して移動するローズウォール選手の美しいフットワークです。右足から首までのラインが一直線である(棒のように倒れていくことにより運動を始動する)ことが、地面を蹴らない動きを象徴しています。

画像1:シンポジウム:スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス2013、日本機械学会

画像2:Side step without kick during backhand stroke by K. Rosewall 15)
(故・川廷栄一さんの撮影による写真です。掲載許可をいただいた後に川廷さんからお電話をいただき、楽しい会話をしたのですが、そのあと、突然、亡くなられたのでびっくりしました。)