テニスラケットの科学(34) マッケンローがラケット・ハイテク化批判を国際テニス連盟(ITF)へ
図1のように、2003年に、元トップ・プレーヤーのマッケンローら数人が,国際テニス連盟(ITF)に対して,ラケットの影響力を抑える対策を要求しました.
“「プレーヤーは最近のラケットを使って,以前では考えられなかった時速240キロメートルというスピードでボールが打てる」,「グリップ内部にチップを埋め込んでボールに当たった瞬間にラケットが堅くなるようなものまである」,「ラケットの長さは27インチ以下、幅は9インチ以下にすべきだ.そうすればボールを打つ面がかなり狭くなり,もっと面白い試合をせざるをえなくなる」,「プロ野球では木製バットが使われる」,「ほとんどのトップ・プレーヤーは,どんな道具を使っても,いいプレーヤーであり続けると思う」”
と言うのです.
国際テニス連盟(ITF)は、回答しなかったようですが、そういうこともあってか、新開発の装置を用いてラケット性能測定実験を精力的に進めることになったわけです。この新開発の装置だけで、質問に回答できるほど、用具とプレーヤーの関係はそう単純ではないのですが?
国際テニス連盟(ITF)が一貫して関心があるのは「テニスにおける技術と伝統の調和」です。伝統あるテニスのプレーを極端に変えるような用具があれば、禁止すると明言しています。
図2は、マッケンローが指摘した軽量ラケットIs-10です。Head社製、フェース面積 114 平方インチ、質量 241 g(フレーム質量 225 g)です。メーカーのカタログによると、ラケット首部の左右表裏4箇所にインテリ・ファイバーを搭載し,ハンドル部には制御回路を組み込み,外部エネルギは使わず、ボールとの衝突時にラケットの剛性を増大させるというのですから、マッケンローらも気になったのでしょう?
図3は、ストリングス面の横の両サイドにグロメットの代わりにローラー(滑車)を取りつけた軽量ラケット Rollers 2.6とRollers 3.1です。Wilson 社製、 張り上がり質量 268 g(フレーム質量252g)です。これも話題になりました。
これらのラケットの性能予測シミュレーション結果(川副研究室)は、機会があれば、紹介させていただきます。
1-画像:元トップ・プレーヤーのマッケンローら数人が,国際テニス連盟(ITF)に対して,ラケットの影響力を抑える対策を要求。Mark McClusky, Tennis Swaps Grace for Strength, Aug.26,2003, Wired News。
2-画像:軽量ラケットIs-10、Head社製、フェース面積 114 平方インチ、質量 241 g(フレーム質量 225 g)川副研究室
3-画像:軽量ラケット Rollers 2.6とRollers 3.1、Wilson 社製、 張り上がり質量 268 g(フレーム質量252g)川副研究室