テニスラケットの科学(207)
:スピンとストリング(5)
: テンションを変えてもボールとストリングの反発係数(パワー)が変わらないのはなぜか? (その2)
図1は、インパクトによる変形によってストリングに発生する張力(テンション)Sと復原力(ボールを跳ね返す力)Fを簡略に示したものです。
復原力Fは、インパクトでの張力Sによって生まれます。
プレーヤーがテニスショップで注文する張り上がりテンション(So)と、変形により発生する張力(S) には大きな差があり、SはSoと変形量X2(二乗)とにほぼ比例します。
図2は、張り上がりテンション、インパクトにおけるテンション、ボールとストリング面の復原力(ボールを跳ね返す力)、面圧(ストリング面の硬さ、バネ剛性)の関係を示しています。
ストリング面の硬さ(バネ剛性、俗称:面圧)は衝突速度(すなわち変形量)にほぼ比例して高くなり、衝突前の硬さの数倍まで変化します。張り上がりテンションに左右されるのは、衝突速度が極めて小さい場合だけです。
図3で45ポンド、55ポンド、65ポンドの場合を比較すると、衝突速度が10m/sでは65ポンドが最も硬く(変形量は最小)、20m/sでは3者の硬さはほぼ同じで(45ポンドは変形量が最大、65ポンドは変形量は最小)、30m/sでは45ポンド(変形量は最大)が65ポンド(変形量は最小)よりわずかに剛性が高くなっています。
したがって、ストリング面の硬さに逆比例する接触時間は、衝突速度が(15m/s~)20m/s以上の実用範囲では張り上がりテンションの違いによる影響はありません。
(付録)図4
●(弦楽器としての)張り上がりテンションS 0のときの、
インパクトでの(武器としての)テンション S と
ストリングの復原力 (ボールを跳ね返す力)F の導出方法
(追)
次の稿では、インパクトにおけるストリングの変形量、ボールの変形量、接触時間などに張り上がりテンションがどのように影響するかについて紹介させていただきます。