テニスラケットの科学(242):スピンとストリング(40) : ストリング別のスピン結果 : スピンが手に伝える感覚 :スピンがかかるほど手に伝わる衝撃振動は小さい:マイルドな打球感
図は、振動の大きいラケット面の先端側オフセンターで打撃した場合(衝突速度30m/s)の手首関節・衝撃振動のシミュレーション波形です。
横軸は時間、縦軸は加速度(力に比例する)です。
(a)は使用済みストリングでフラット打撃、
(b)は使用済みストリングでトップスピン打撃、
(c)は潤滑剤を塗った使用済みストリングでトップスピン打撃、
(d)は新品ストリングでトップスピン打撃
の場合に相当します。
(b)と(c)のトップスピン打撃の場合、
インパクトにおける力積(打撃力)のラケット面に垂直な成分は、それぞれ(a)のフラット打撃の85%、65%、インパクトによる手首関節の衝撃力はそれぞれ(a)の65%、41%です。
縦糸が横にずれて、ストリング面に平行な復原力によりスピン量が増大し接触時間が長くなると、ラケットフレームの振動が低減し、ボールとストリングの変形量(つぶれ)も減少して、ボールに接触した部分だけがくぼんでいるように見えます。
これらが「ボールをつかむ感覚が高まる」「ホールド感が増す」「打球感がマイルドになる」などの打球感に対応するのかもしれません。
参考資料◎KAWAZOE Y. and OKIMOTO K., “Tennis Top Spin Comparison between New, Used and Lubricated Used Strings by High Speed Video Analysis with Impact Simulation”, Theoretical and Applied Mechanics Japan, Vol.57, (2009), pp.511-522.