テニスラケットの科学(645)
:テニスボールのリサイクル・再利用(5)
:硬式テニスボールのリサイクル提唱と高品質再生「ECOボール」の研究開発*(4)
 テニスボールのスピン性能におよぼすフェルトの影響
* 2011年のシンポジウム講演論文紹介

● テニスボールのスピン性能におよぼすフェルトの影響
 テニスラケットの科学(644)の画像:図3,4,5の原・動画です。
・映像1:「フェルト(毛羽)無しボール」の紹介
     :from “テニスを科学する アインシュタインの眼”NHK BS hi,2008年2月26日(再編集by川副研究室)

・映像2: プロテニスプレーヤーの打撃における「テニスボール」のインパクト後の打球速度とスピン挙動
      (NHKとの共同実験)

・映像3: プロテニスプレーヤーの打撃における「フェルト(毛羽)無しボール」のインパクト後の打球速度とスピン挙動
      (NHKとの共同実験) 

・ プロテニスプレーヤーの打撃における「テニスボール」と「フェルト(毛羽)無しボール」のインパクト後の打球速度とスピン挙動です。
 「フェルトなしボール」のインパクト後の挙動には、 剛性低下によるボールの固有振動(ボールの飛びにおけるエネルギ損失に関連する)が見られますが、 「テニスボール」には振動はほとんど見られません。
・(注) ボールの固有振動数とストリング面の膜振動としての固有振動数が近い値なので、共振しやすく、インパクト後に音や残留振動が持続します。
 特に、ストリング面の中心、いわゆるスイートスポットの位置が振動の腹になるので、スイートスポットで打撃したときがストリング面とボールの振動や音は最も大きく
(フレームの振動は最も小さいことに注意! 誤解がないように!)、
 スコーンという音が出ますが、テニスボールでは、一般に、目に見えるほど大きくはありません。
 しかし、フェルト(毛羽)無しボールでは、ボールの残留振動がはっきり見えますね!
 毛羽無しの場合は、ボールの剛性が低くなったため、ボールの固有振動数とストリング面の膜振動としての固有振動数がより近くなって、振動が顕著に表れたのかもしれません?
・ プロのトップスピン(順回転)打撃における「テニスボール」と「フェルトなし(滑面)ボール」のスピン性能測定値は、 「フェルトなし(滑面)ボール」は,スピン量が顕著に低減し(平均 50 %), 接触時間も短く(平均 23 %), スピン量が大きく減少するためにインパクト直後の打球速度は速い(平均 42 %)ことを示しました。

*参照:テニスラケットも科学(644)
(次稿に続く)

図―1


図ー2


図―3


(参考文献)
・ 川副 嘉彦, 沖本 賢次, 沖本 啓子, 南野 秦造, 島村 康太, 中川 真理,
 硬式テニスボールのリサイクル提唱と高品質再生「ECOボール」の研究開発
 シンポジウム: スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス講演論文集2011, 2011-10-30, pp. 441-446
https://kawazoe-lab.com/research/tennis-ball-recycling/
・ 川副嘉彦, 武田幸宏, 青木克巳, 中川慎理、
 超高速ビデオカメラと流れの可視化によるテニスボールの スピン挙動解析と毛羽の役割
 日本機械学会・年次大会講演論文集 : JSME annual meeting 2009、pp. 287-288.