テニスラケットの科学(748)
:テニスラケットの科学(721)の補足24
:スピン・ガットとして販売されている多角形ポリがノーマル・ポリよりスピンがかかりにくい理由②
:ボールとヘッド固定のストリング面との衝突実験の画像解析からも、ストリングの材質による摩擦力の違いはない
:重要なのは、縦糸と横糸の摩擦が小さいこと! (ポリエステル・ストリングの出現によりストリングの性能設計法が180度変わった!)

・ (昔の?)ナイロンのスピン・ガットと呼ばれていたストリングも、表面が粗く、摩擦が大きく、滑りにくくて、名称とは逆に、スピンがかかりにくいものでした。
・ 設計指針に、ストリングは摩擦が大きい方がスピンがかかるという固定観念があったからだろうと思います。
・ 多角形ポリ(スピン・ガット)と呼ばれるものも、断面形状の違いでボールを引っ掛けてスピンを増すという間違った観念があるのではないでしょうか?
・ 画像1のように、ストリング面は、縦糸と横糸が編まれていること自体が大きな粗さになるわけですから、わざわざストリング単体の表面を粗く、あるいは滑りにくくする必要はないですね!

画像ー1

・  画像2のように、ボールにはフェルト(毛羽)があるので、ストリングの微小な凹凸がボールとの摩擦力に影響するとは考えにくいですね!
・ 多角形ポリが、表面が硬くてツルツルで滑りやすくノッチができにくいのであれば、スピン性能が持続しやすいということはあるかも知れませんが、ノーマル・ポリで十分ですね!

画像ー2

(画像3)
・ フレームを固定してボールを斜め衝突させた実験において、
 映像から見たボールの反発速度と回転数の画像分析から、
 衝突力に垂直な接線方向の摩擦力を測定した興味深い論文*
がありますが、
 ストリングの材質による摩擦力やスピン量の違いはない
と結論されています.

画像ー3

(参考文献)

・前田 寛・岡内優明,
テニスラケットのストリング特性とトップスピン
九州体育・スポーツ学研究,第31巻,1号, (2016), pp. 1-10.

http://webpages.ihs.kyushu-ac.jp/…/journals/Vol31No1.pdf
 文献*は、前田・岡内のフレームを固定してボールを斜め衝突させた実験において、映像から見たボールの反発速度と回転数の画像分析から、衝突力に垂直な接線方向の摩擦力を測定した興味深い論文ですが、ストリングの材質による摩擦力やスピン量の違いはないと結論されています.

(参考記事)
・テニスラケットの科学(470) 
:テニスラケットの科学(469)の補足1
:多角形断面ストリング(多角形ポリ、俗称スピン・ガット)のスピン性能に関連して
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-470/