テニスラケットの科学(879):
(備忘録:解説記事 2003年) 
テニスラケットの素材・構造と性能*(その1)
1. ラケットとパフォーマンス
*川副嘉彦,テニスラケットの素材・構造と性能,バイオメカニクス研究(日本バイオメカニクス学会誌),(特集:素材とスポーツ)、第7巻2号,(2003), pp. 136-151.


1. ラケットとパフォーマンス
 スポーツ用具は,素材の複合化により設計・製造の自由度が大きくなり,身体的条件や技術的条件の異なる使用者との整合を考慮したきめの細かい設計をめざす段階に至っている.
 ラケットの進歩がテニスのプレイ・スタイルを変えたと言われている.
 しかし,ラケットの性能評価は,現状では,経験の深いテスターやプレイヤーを介して行われており,性能評価に関する用語や表現には物理的定義が与えられていない場合が多い.
 プレイは用具で変わる.
 逆に,用具の性能はプレイヤーによって変わる.
 したがって,用具とプレイヤーの相互作用によってスポーツとしてのパフォーマンスが向上する.
 図1は,プレイの状況・環境によってもパフォーマンスは異なってくることを示す.
 スポーツ用具性能評価が難しい理由である.
 ラケットに求められる基本的な性能は,パワー,コントロール,打球感と一般にいわれている.
 またこれらの他に,「玉離れが良い」,「ホールド感がある」,「面の安定性が良い」など,微妙な性能の違いを評価する表現がいろいろある.
 一方,テニス肘をはじめとする障害と用具の問題がある.
 肘の痛みの原因は複雑であり,ほとんど未解明であるが,テニス肘になりやすいラケットが存在することは,多くのプレイヤーが経験的に認めている.
 しかし,用具の性能評価に関してプレイヤーやテスターが用いる感覚用語とラケットの物理特性との関係については不明な点が多く,メーカーのカタログやテニス専門誌の記事などにも誤解や矛盾がみられる.
 一般ユーザーにとっては,コートの上でボールを打ってみてはじめて性能がわかるというのが現実である(川副,1991; 1993; 1994; 2001; 2002e; 2003).

図ー1


 図1 プレイヤー・用具・環境の相互作用によって発現するパフオーマンス(川副,2003b)

(引用文献)
・川副嘉彦,テニスラケットの素材・構造と性能,バイオメカニクス研究(日本バイオメカニクス学会誌),(特集:素材とスポーツ)、第7巻2号,(2003), pp.136-151.
https://kawazoe-lab.com/research/tenisutakettonosozai/

(続く)