テニスラケットの科学(880):
(備忘録:解説記事 2003年) 
テニスラケットの素材・構造と性能*(その2)
2. ラケットはどう変わってきたか
*川副嘉彦,テニスラケットの素材・構造と性能,バイオメカニクス研究(日本バイオメカニクス学会誌),(特集:素材とスポーツ)、第7巻2号,(2003), pp. 136-151.


 (続き)
2.ラケットはどう変わってきたか
 テニスの源流は13世紀にフランスで行われていた「ジュ・ド・ポーム」という手でじかにボールを打つ競技にさかのぼると言われている.
 テニスは手の代わりにラケットという用具を手で持ってボールを打つ競技である. 
 テニスラケットは 1960 年代前半までは木製でフェイス(打球面)面積が 68 in2(平方インチ)のレギュラーサイズと決まっていたが,1967 年にスチール製,1968 年にアルミ製の金属ラケットが現れ,1974 年には複合材のラケットが登場した.
 過去 30 数年の間にラケットは大きく変わってきたが,1976 年に現れた 110 in2の「デカラケ」,1987年の「厚ラケ」,そして1995年の「長ラケ」は最も革新的なラケットだと言われている.
 「デカラケ」は,打球面が広いラケットである.
 最近のラケットの打球面サイズは 95 in2~115 in2が主流であるが, 130 in2のセレス選手の大きなラケットや137 in2という超大型サイズが話題になったこともある.
 「厚ラケ」は,フレーム剛性を高めたラケットである.
 従来のラケットの4倍近くまで剛性を高めたラケットが当初は主流であったが,次第に剛性をやや落とした軽量の厚ラケが主流になってきた.
 従来のフレーム厚19mmに対して30mm以上まで,フレーム厚(剛性)の異なる多くの機種が市販されている.
 最近は,フレームをあまり厚くしないで剛性の高い機種も開発されており,フレーム厚さと剛性は必ずしも比例しない.
 また,剛性はフレーム形状や打球面サイズ(フェィス面積)にも依存するから,素材の硬さとは異なるものである.
 ラケットは経験の産物であり,木製ラケットの時代からラケットの全長は 27インチで変わることはなかった. 
 長ラケは,従来のラケット全長27 インチ(約 685 mm)を小刻みに長くしていったラケットである.
 上記の 137 in2 の超大型サイズの全長は32インチ( 812 mm)である.
 国際テニス連盟は,プロの試合では 1997 年の1月から,一般の試合では2000年の1月から全長が29インチ以上のラケットの使用を禁止した.
 しかし,最近は従来の 27 インチに近いラケットに逆戻りしている.
 長ラケは改良の余地がある.
 最近のラケットの特長は軽量化である.
 ラケットの質量は(ストリングスを張った状態で),木製の時代は 370 g ~400 g,複合材ラケットの初期の頃は 360 gから 375 g,さらに軽量化が進み超軽量ラケットと呼ばれる300 g を切るラケットが現れた.
 最近の最も軽いラケットは 220 g に達している.
 図2は,木製ラケットと最近のハイテク・ラケットの代表例を示す.

図ー2

 図2 ラケットの変遷 (木製ラケットと最近のハイテク・ラケット, 質量はストリングスを含む)

(引用文献)
・川副嘉彦,テニスラケットの素材・構造と性能,バイオメカニクス研究(日本バイオメカニクス学会誌),(特集:素材とスポーツ)、第7巻2号,(2003), pp.136-151.
https://kawazoe-lab.com/research/tenisutakettonosozai/

(続く)