テニスラケットの科学(540)
:テニスラケットの科学(538)の補足1
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(50)
:ストリング・テンションとラケット性能➂
:「いわゆるテンション(張るときの荷重)」と「張られているストリングのテンション」は同じではない!

● テニス雑誌「スマッシュ」2020年11月号81頁「ストリングの基礎知識」に、
 読者(テニス歴2年、30歳女性、週1回スクールに通っている初心者)からの質問
「Q:現在張っているストリングが自分にあっているのかわかりません。何を基準に考えればいいですか?」
が掲載されています。
・ この質問に対して、もしボールが浅い場合には、少しテンションを低く、深い場合には高く、調整の目安として、3ポンドほど変化を加えてみると、違いがわかりやすくなりますというスマッシュ誌・ストリンガーさんの回答がありますが、
 一般にテンションと言われているのは、ストリングを張るときに加えた荷重の大きさのことであって、テンションメーターで実際にストリングにかかっているテンションを測定すると、荷重の大きさとは異なりますし、ストリングの1本1本のテンションも異なります。(図1)
 ・張られている横糸のテンションは、縦糸・横糸同志やグロメットなどの摩擦によって、張るときに加えた荷重より低く、3ポンド以上低いテンションになっています。
 ・張った翌日にはテンションは 3ポンドをはるかに超えて、下がっています。

図ー1

● 図2は、グランドスラム経験豊かなベテランのプロ・ストリンガーが テンション55lb/52lb(縦55ポンド、横52ポンド)で張ったときに、1本1本のストリングのテンションがどうなっているかをテンションメーターで測定した例です。
 ・ ストリング1本1本のテンションが異なり、横糸はかなりテンションが低くなっています。
 ・ 縦糸55ポンド、横糸52ポンドで張ったストリングは、ストリング面のスイートスポットあたりで、実際のテンションは、縦糸 52 ポンド、横糸 35 ポンド程度になっています。
 ・ ストリングを張る荷重を 3 ポンド程度、上げたり下げたりしても、実際のストリングのテンションの値はどうなっているか不明です(ストリングの1本1本を測ってみないとわからない!)。
 ・ 実際のテンションの高低は、ストリング面の硬さに直結するので、ストリング面を弾いた音の高さ(振動数)で判断することができます。
 音が高いほど、張られたストリングのテンションが高いということになります。

図―2

●  図3は、ストリング張り上がり直後と24時間後のストリング1本1本に実際にかかっているテンションの測定結果例です。
 ・24時間後には、 縦糸55ポンド、横糸52ポンドで張ったストリングは、ストリング面のスイートスポットあたりで、実際のテンションは、縦糸 51 ポンド、横糸 34 ポンド程度になっています。
 ・ スイートスポットのあたりではテンションの低下は少ないですが、スイートスポットから少し離れた縦糸のテンションは
4ポンド程度低くなっています。
 ・ したがって、3 ポンドほど変化を加えてみても、良し悪しの違いは判らないでしょう! 
 ・ 音色は多少変わっても、特に初心者には、実質的な意味はないように思います。

図ー3


(参考文献)
川副嘉彦・桜井匠・一木公央,日本機械学会ジョイント・シンポジウム1999(スポーツ工学シンポジウム,シンポジウム・ヒューマンダイナミクス)講演論文集、No.99-41,pp.212-216。 (1999年)
https://kawazoe-lab.com/wp-content/uploads/2016/08/19991005.pdf

(参考資料)
テニスラケットの科学(538)
:テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(48)
:ストリング・テンションとラケット性能①
:誤解されやすいストリング面とボールの反発力(復原力)と変形挙動
https://kawazoe-lab.com/ten…/science-of-tennis-racket-538/