テニスラケットの科学(1)
なぜプロは試合中にラケットを替えるのか
2017年12月に下記の題目で講演発表した概要報告を、先日、日本テニス学会に提出しました。
「なぜプロは試合中にラケットを替えるのか
-ストリングの武器としての性能と弦楽器としての性能のメカニズム(実験と理論に基づく考察)-
川副嘉彦(川副研究室)」
テニス選手やテニスコーチの方の眼に触れることは少ないと思い、参考になりそうなデータをFacebookで紹介させていただくことを思いつきました。
結論は、
(1) ストリングが古くなっても反発性は低減しない。
(2) ストリング・テンション(初張力、取付荷重)は、弦楽器としての性能(感知できる振動、音、心理的)に影響しても、武器としての反発性(打球速度)には影響しない。
(3) ストリングは使用するほど、ノッチ(溝)ができて、スピン性能が低下するので、特に、トップ・スピン打撃ではコントロールが難しくなる。
したがって、試合の途中で選手がラケットを替える主たる理由は、時間の経過とともに低減するスピン量、コントロール性能を回復させるためである。
結論に至るまでの具体的なデータは、テニスラケットの科学(2)以降、順次紹介させていただきます。
1-動画:プロ・テニスプレーヤーによるトップ・スピン打撃における新品(スナップバック効果:大)と使用後(スナップバック効果:小)のスピン性能比較(天然ガット)。川副ら(2010、NHKとの共同実験)
2-画像:(d) スナップバック効果、(e) 使用済みストリングに生じたノッチ(溝)、(f)(g) 映像解析のイメージ。川副ら(2010、NHKとの共同実験)