テニスラケットの科学(147) テニス書・テニス雑誌の解説に異見あり(26):「テークバックでラケット先端はフェンスへ向くか否か」(2)
テニス雑誌・最近号(*1)特集『最先端ストロークを徹底強化』に、Part1「テークバックでラケット先端はフェンスへ向くか否か」という興味深い詳細な解説があり、前回は、“ 今やラケットの先端はバックフェンスへ向かなくなった ”のではなく、「昔はラケットの先端をバックフェンスへ向けてボールを待ってフォワード・スイングを開始した」が、「今はラケット先端をネット側に向けた構えの状態でボールを待って、上腕(肩)を外旋(外側へ回転)しながらフォワードスイングを開始することによりラケット先端がフェンスを向き、十分なテイクバックが確保される。」という(異見!)を紹介させていただきました。
この記事では、さらに、次のように解説されています。
“ みなさんが使うラケットは軽いもので 280 g くらい、重いものだと 360 g くらいでしょうか。重いラケットは振り出すとき(フォワードスイングの際)に空気抵抗を受けやすく、ラケットフェースがやや上を向きやすくなります。そしてインパクトしようと上を向いたフェースを起こす際に、お風呂の現象のような揺れが出て、インパクトミスが起こりやすくなるのです。 ——- 強い選手たちは、それらの抵抗を考えてプレーすることはなくとも、抵抗の影響が少ない技術を会得していると考えられます。それが、彼らがテークバックの際にラケットの先端をフェンスへ向けない理由の一つに挙げられます。”(異見あり!)です。
空気抵抗は、断面形状に関係するもので、重量には関係しませんが、同じ空気抵抗なら軽量ラケットの方がむしろ問題になりますが、空気抵抗がほとんど問題ないようにラケットは設計されています。
「テークバックの際にラケットの先端をフェンスへ向けてボールを待つ打法」から、「ボールが来たら半身の構えから一気にフォワード・スイングにいたる打法」に変化した理由は、軽量ラケットによる高速プレイの現代テニスでは高速移動が求められ、ラケットを引かないで半身の構えで素早く移動し、半身の構えから一気にフォワード・スイングにいたる打法が適しているというのが理由の一つかと推察します。
また、この打法は、「スイングが肩の動きを基本にしているのでバイオメカニクスの観点からも身体各関節の負荷が少なく、しかも、ラケットを加速するのに十分なテイクバックを確保できる」というのが新しい概念かと推察されます!
なお、ナダル選手のコマ写真も掲載されていましたので、編集を加えた図を添付させていただきます(*2)。
移動しながらの構え(コマ写真1,2)から、上腕(肩)を外旋しながらフォワード・スイングを開始(コマ写真3、4、5)すると、ラケット先端がフェンスへ向き十分なテイクバックが確保されているように見えます(コマ写真5)。
*1:テニス雑誌・テニスマガジン、2019年6月号、pp.8-17.
*2:ナダル選手のフォアハンド(テニスマガジン2019年6月号p15の図を編集)
(2019-0529-Nadal’s forehand-TM2019年6月p15-Fb-Ss-edited by Kawazoe)