テニスラケットの科学(213)
:スピンとストリング(11)
: プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション
:ボールとラケットの衝突力とストリング面の変形量
・ 図1は、(張り上がり)テンションの違いによるストリング面の「復原力(復元力)」Fmax(接触時間の間の最大値)の差を、変形量(たわみ)との関係で調べたシミュレーション結果です。(テニスラケットの科学(208)参照)
図の縦軸の FはFmax(接触時間の間の最大値)です。
同じ変形量では、もちろん、(張り上がり)テンションの高い方が復原力は大きくなります。
ただし、(張り上がり)テンションが高い方がインパクトでは変形が小さいので、インパクトでのボールとラケットの衝突速度に対しての復原力が大きいかどうかが問題です。
・ 図2は、(張り上がり)テンションの違いによるインパクトでのボールとラケットの衝突力の差を、衝突速度との関係で調べたシミュレーション結果です。
同じ衝突速度では、衝突力におよぼすテンションの影響はほとんどありません。
・ 衝突力は、インパクトにおけるボールなどのエネルギ損失を考慮したものだから、ストリング面の復原力に相当すると考えることができる。
ストリングの復原力の大きさはラケットの反発力の大きさを表す。
・ 図2の衝突速度における衝突力を図1の復原力に与えると、その衝突速度におけるストリング面の変形の大きさを求めることができる。
与えられた衝突速度におけるボールの変形の大きさも同様に求めることができる。
・ たとえば、衝突力、あるいは復原力が120kgf(キロ)の場合、テンション1.4倍(77ポンド)、1.2倍(66ポンド)、1.0倍(基準55ポンド)、0.8倍(44ポンド)、0.7倍(39ポンンド)のストリング面の変形量はそれぞれ、1.8mm、1.9mm、1.95mm、20.5mm、21.0mmです。