テニスラケットの科学(216):スピンとストリング(14) : プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション : ラケット面の中心付近でボールを打ったときのグリップの加速度(力に比例)波形 (テンション35ポンドと60ポンドの比較例)

・上級プレイヤーが実際に面の中心でボールを打ったとき、ストリング・テンションにより、グリップ部に伝わる衝撃振動に差が見られるか調べたもの(フォアハンド・ストローク実測値、日本テニス研究会)。
 (a)は35ポンド、(b)は60ポンドで、倍近いテンションの差があるが、インパクト波形の初期(接触時間の間)に見られる衝撃力のピークには、ほとんど差がありません。
 インパクト波形の初期(接触時間の間)に見られる衝撃力に続く波形は、主にフレームの3節曲げ振動とストリング振動によるものです。
 ストリング面の中心付近(スイートスポット)で打撃した場合は、フレームの2節曲げ振動はほとんど現れず、スイートスポットで打撃したときに最も大きく出てくるフレームの3節曲げ振動とストリング振動も大きくはありません。
(ご参考までに)
1.インパクトで発生するラケットの振動(振動モードと振動の節)
 ラケットは固有の振動モード(振動の形)を多く持っていて、振動数の少ない方から発生しやすく、打点によって現れやすい振動モードが異なります。
 ボールとラケットの衝突速度が大きいほど多くの振動モードが現れやすくなります。
 振動モードには振動しない節と振幅の大きな腹があって、節に衝突したら振動が発生しません。腹の部分に衝突したら振幅の大きな振動が発生します。
● ラケットの(振動数の低い方から) 4つの振動モード
・振動数が低いほど振動が発生しやすく、振幅が大きい。
1次(主要な)振動:2節曲げ
2次:2節ねじり
3次:3節曲げ 
4次:ストリングの膜振動
横、斜めから見た図:水平線と交わる位置が節
上から見た図:白と黒の境界が節