テニスラケットの科学(217):スピンとストリング(15) : プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション : ボールが30m/秒(時速108キロ)で衝突したときのミッドサイズ・ラケット3種の振動と打点位置(参考までに)

 図1の左図は、ラケットの振動モードの例です。
 ラケットは、インパクトの衝撃によって、固有の振動数と形(モード)の振動を発生します。そのうちのもっとも基本的なものが左のような形を見せる「2節曲げ振動」であり、衝突速度が特別に高くないときは、フレームの振動の成分はほとんどこのモードになります。
 この2節曲げの振動数はラケットの重量や剛性によって異なり、それを「固有振動数」と言う。

 図1の右図は、2節曲げモードよりも振動数が高い「3節曲げ振動」です。この二つの変形の仕方を見ると、場所によって大きく振動する所(=腹)とまったく振動しない所(=節)があることがわかります。

 図2は、ボールが30m/秒(時速108キロ)で衝突したときのミッドサイズ・ラケット3種の振動と打点位置の関係を示すシミュレーション結果です。
 インパクトでのラケット振動(基本振動の振幅)の初期振幅を示しています。
 ボールの衝突位置は根元、中心、先端の3箇所と設定しています。
 ストリング・テンションはいずれも55ポンドです。
 この図におけるフレームの変形は、振動の最大の瞬間(初期振幅)を示しており、それを斜めから見た図と横から見た図です。
 横から見た図での水平線と、変形したラケットが交わる点が、振動しない静止点(振動の節)を表しています。
 ミッドサイズのノーマルタイプ、厚ラケ、超軽量トップヘビーの3種のラケットの特長がよく表れていますが、ラケット面中心で衝突した場合は、どのラケットも一様に振動は小さい。