テニスラケットの科学(218):スピンとストリング(16) : プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション : ラケット面中心から大きく外れた位置でボールを打ったときのラケットの振動とテンション (45ポンドと55ポンドの比較例:シミュレーション)

 図1は、(張り上がり)ストリング・テンションが異なるラケットの先端打撃における応答振幅シミュレーションです。
(ラケットは、質量366g(ストリング含む)、全長685mm、重心位置はグリップ端から325mm、衝突速度30 m/秒)
 テンションが縦45/横27ポンドの場合と縦55/横33ポンドの場合を比較したものです。
 中心を大きく外れた先端で衝突した(フレームショットに近い)場合は、ストリングを強く張ったラケットの方が緩く張ったラケットより、インパクトにおける応答変位振幅は大きくなっています。
 図2は、(張り上がり)テンションが異なるラケットの振動によるエネルギ―損失を示しています。
 衝突速度(30 m/秒)とストリング面上の打撃点を与えて、テンションが異なるラケット(図1)の振動によるエネルギー損失をシミュレーションした結果です。
 縦軸は衝突前の運動エネルギーに対するラケット振動によるエネルギー損失の割合を示し、横軸は打撃点です。
 フレームショットに近い打撃点Hではテンションの高いラケットのエネルギ損失が大きいことを示している。
 衝突におけるエネルギー損失と反発係数は密接に関係するので、ボールとストリングの衝突、衝突におけるラケットの回転によるエネルギ損失、フレームの振動によるエネルギー損失を考慮すれば反発係数分布、反発力係数分布がシミュレーションで求まります。シミュレーション結果は実測値によく一致します。
(参考文献)
・川副 嘉彦,衝突現象を考慮したテニスラケットのCAE
(ストリングス張力と衝突挙動)、
日本機械学会論文集. C編 59巻(558号) 1993, pp.521-528.