テニスラケットの科学(238):スピンとストリング(36) :ストリング別のスピン結果 :ストリングが新しいほど スピンはかかりやすい

・ストリングが新しいほど スピンはかかりやすい
  図1は、ナチュラルストリングを張ったラケットで、プロが、球出しされたボールをトップスピン打撃したときのインパクトの実験解析結果です。
 新品(New)の場合と試合後の使用済み(Used)の場合を比較しています。
 試合後のストリングには縦糸と横糸の交差点に深い溝ができており、トップスピン打撃において、縦糸の横方向へのズレと戻りによる面内の復原力(スナップバック効果)が少ないために、スピン量が顕著に低減し(70%低減)、接触時間も短くなっています(13%低減)。スピン量が大幅に低減している分だけ、打球速度(打球速度)は50%増大しています。
 一方、新品の場合は、使用後の場合に比べると打球速度は遅くなりますが、スピン量がはるかに大きいため、(ビデオ映像によると)バウンドしたボールが鋭く高く跳ね上がります。
 そうするとコントロールがしやすく、打球の威力も増すことが予想されます。
・プロとアマが トップスピン打撃した実測例
 図2は、新品のナチュラルストリングを張ったラケットで、プロとアマチュアのプレーヤーが、球出しされたボールをトップスピン打撃したときのインパクト挙動を比較した結果です。
 この実験では、プロのトップスピン打撃はアマチュアのトップスピン打撃に比べて、スピン量は60%、打球速度は4%(ほとんど同じ)、接触時間は33%大きな値を示しています。
 プロのトップスピン打撃では、アマチュアに比べてスピン量がはるかに大きいのが特長的で、バウンドしたボールは鋭く高く跳ね上がります。
 また、トップスピン打撃後のボールの飛びがプロとアマチュアで差が少ないのも特長的です。
 打球速度にほとんど違いが見られないのは、プロのほうがスピンの割合が大きいからです。
 プロはハードヒットしてもボールにスピンがよくかかっているので、コントロール性が低下せず、打球速度も抑えられるため、インパクトにおける衝撃も大きくならず、関節の負担が増大しないことを示唆しています。

図1

図2