テニスラケットの科学(325) :スピンとストリング(69) : プロのストリンガーも誤解しているストリング・テンション :再度テンションの大誤解を解く(その3)

● シミュレーションによる(理論的検証) :張り上がりテンションを39ポンド~77ポンドまで変えた場合、反発力はどう違うか!
● ストリングは緩く張ると伸びが大きいので、インパクトでのテンションの増大も大きくなります。硬く張ると伸びが小さいので、インパクトでのテンションの増大も小さくなります。
 したがって、張ったときのテンション(初期設定)が異なっても、インパクトでの(リアル)テンション、すなわち反発力にはほとんど違いがなくなるわけです。
● ストリングの役割について
 インパクトでは、ボールがつぶれ、ストリング面が大きくたわみます。
 この変形に対して、元に戻ろうとする大きな瞬間力(テンション)が発生し、このテンションの復原力成分がボールを跳ね返します。
 これが基本的な反発の原理で、インパクトにおけるストリングの役割は極めて重要です。
 しかし、ストリングについては誤解だらけの情報があふれています!
 ストリングのたわみが非常に小さい(衝突速度が非常に小さい)ときは、張り上がりテンション(初期設定値)が実際の(リアル)テンションに影響しますが、ストリングのたわみがある実用的な衝突速度では、初期設定値よりもたわんだことにより発生したテンションの方が大きくなり、張り上がりテンション(初期設定値)の影響が小さくなるのです。
● ボールの変形については、テニスラケットの科学(209)を参考にしてください。
 ストリングを緩く張っても硬く張っても実際の(リアル)テンションに違いはほとんどなく、したがって、復原力、反発力、面圧にもほとんど違いがないので、ボールの変形量にも違いがほとんどないわけです。
 張り上がりテンションは、あくまで、初期値(ストリングがたわんでいないときのテンション)です。
(参考文献)
・ Yoshihiko KAWAZOE, Effects of String Pre-tension on Impact between Ball and Racket in Tennis,
 Theoretical and Applied Mechanics, Vol.43(1994), pp.223-232.
・ 川副嘉彦、ラケットの科学II-⑦ ストリングス・テンションはインパクトにどう影響するか、
 月刊テニスジャーナル,13巻3号(1994.3), pp.80-85.

図1

図2

図3